近畿大学水産研究所は10月26日、ニホンウナギの完全養殖に成功したと発表した。同日時点の仔魚の飼育期間は112日。今後、育成技術の安定化に向けた研究を続ける。ウナギの完全養殖は水産研究・教育機構が2010年に成功しているが、大学では初という。
近畿大学水産研究所では1976年からニホンウナギの種苗生産研究を行い、採卵・ふ化に成功していたが、仔魚が餌を食べるには至らず研究を中断していた。
2019年3月、水産機構が開発・公表している技術情報をもとに研究を再開したところ、人工ふ化に成功。人工ふ化したウナギの雌雄を親魚として、成長の良いものから順次、人工的に成熟を促進する「催熟」を行ったところ、2023年7月5日に受精卵が得られ、翌6日には仔魚がふ化して完全養殖に成功したという。その後、8月3日、8月24日にもふ化が確認されれた。
今後、3カ月から半年程度でシラスウナギに変態し、一般的な食用サイズに成長するにはさらに約1年程度かかるという。
ウナギの完全養殖は、受精卵を得てシラスウナギにするまでが一番難しいという。今後は養殖用種苗として利用できるシラスウナギまでの育成を第一目標に、仔魚用飼料の改良に取り組むなどして育成技術の安定化に向けた研究を続ける。
ウナギは国内消費量の99%以上を養殖に依存してているが、養殖に用いる種苗はすべて、シラスウナギと呼ばれる天然の稚魚が使われている。近年、漁獲されるシラスウナギの量が著しく減っていおり、完全養殖の実用化が望まれている。
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