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魚が死んでからも子孫を作る技術、東京海洋大が開発 死後の細胞から卵・精子を作製
東京海洋大学は、死んだ魚から単離した生殖幹細胞を別の個体に移植して卵や精子へ分化を誘導する技術を開発した。これにより、死後長時間経過した魚からでもその子孫を作り出すことが可能になるという。
東京海洋大学は4月14日、死んだ魚から取り出した「生殖幹細胞」を別の個体に移植して卵や精子を作製する技術を開発したと発表した。死後長時間経過した魚からでもその子孫を作れるようになるため、貴重な魚の繁殖などに生かせる可能性があるという。
研究チームは、死後12〜24時間経過したニジマスから卵と精子のおおもとの細胞である生殖幹細胞を単離し、別のニジマスの個体に移植した。その結果、死後12時間経過したニジマスから移植した生殖幹細胞が正常に宿主の卵巣や精巣に取り込まれ、増殖し卵や精子に分化する様子を観察できたという。
死後24時間経過したニジマスの生殖幹細胞では、移植効率が低下したものの、移植後の宿主の卵巣や精巣内で増殖、分化を確認できたとしている。
養殖場や水族館で貴重な魚を飼育している際に、停電や設備トラブルなどの事故で魚が死亡するケースがあった。死後、長時間放置された個体は細胞劣化が進むため、遺伝子を次世代につなぐことは不可能と考えられてきたが、この研究により死魚から子孫を作り出せる可能性があることが分かった。
この研究成果は、オランダのElsevierが出版する水産学専門誌「Aquaculture」に4月14日付で掲載された。
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