ブツ撮りするなら必需品? 「ヘリコイド付きマウントアダプター」がすごかった話:小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)
商品撮影で割と困るのが、イヤフォンなど小さいものや、製品の一部分のアップなど「マクロ撮影」が必要になるシーンだ。昔は、レンズとカメラの間に挟み込んでそれを可能にする「エクステンションチューブ」という商品もあったが、オールドレンズで使う「ヘリコイド付きマウントアダプター」を入手してみたところ、実に便利な商品だったのだ。
単焦点レンズが万能レンズに
M42マウントはその名の通り、42mm径のスクリューマウントである。オープン規格だったので、かつては多くのメーカーが採用しており、オールドレンズの数も多い。国産では旧アサヒペンタックスの「Super-Takmar」シリーズが有名で、55mmの標準レンズはそのボケ味ゆえに3〜4年前にInstagramでもバズったことがある。その他ドイツではツァイス、フランスではアンジェニュー、ロシアではジュピターといったブランドにも、優秀なM42マウントレンズがある。
筆者の手元にもSuper-Takmarが数本、カールツァイスが1本あるが、いろいろ試した結果、ブツ撮りで一番使い勝手が良かったのが、Super-Takmar 28mm/F3.5(後期型)であった。使用カメラはAPS-Cのソニー「ZV-E10」なので、35mm換算で42mmの単焦点レンズとなる。小物を撮るにはちょうどいい焦点距離だ。
そのままでは近接距離40cmが限界だが、ヘリコイドを繰り出すとそこからレンズ前3cmぐらいまで接近できる。単純なエクステンションチューブでは、フォーカス調整を被写体とカメラ間の距離で調整しなければならないが、このアダプターなら構図を決めたあとにヘリコイドを回せばフォーカスが調整できる。ある意味第2のフォーカスリングのような格好で使えるのだ。
ヘリコイドを一番縮めれば普通のマウントアダプターなので、レンズの無限遠からちゃんと使用できる。そこからレンズ前3cmの全域でフォーカスが合う42mmレンズなど、普通は存在しない。レンズを購入したのはずいぶん前なので価格は忘れてしまったが、今は6000円から8000円ぐらいが相場のようである。アダプターが約8000円なので、合計1万6000円程度。マクロレンズを購入するよりもずいぶん割安だ。
マクロ領域では被写界深度が極端に浅くなるので、商品撮影ならF8ぐらいまで絞った方がいいだろう。芸術系であれば解放でも面白い。最近の小物撮影は全てこのレンズ1本とマウントアダプターで対応できるようになった。
なにせ今から60年前ぐらいのレンズなので、今どきのようなキレは望めないが、オールドレンズをお持ちの方は、万能マクロレンズとしてよみがえらせてみてはいかがだろうか。
関連記事
- 「Nikon Z」はマウントアダプターで“万能”説? ソニーFEやキヤノンEFレンズも利用可能に
一番多くのレンズが装着できるのはNikon Zになるかもしれない。 - 標準ズームの次に買うと一番楽しいレンズは何? 6種類の単焦点レンズで街を撮影してみた
標準ズームは持っていて、撮影が楽しくなってきたけど特に何か専門で撮りたいものがあるわけではない人が次に何を買うと楽しいか。やはり単焦点レンズだ。 - レンズ前約7センチまで寄れる新型ワイドレンズの実力――タムロン「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」
タムロンの新しい広角単焦点「SP 35mm F/1.8 Di VC USD」を使ってみた。滑らかなボケを生み出す明るい開放値と効果3段分の手ブレ補正に加え、クラス最高をうたう近接性能が魅力の1本だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.