徳島の「学校タブレット大量故障」にみる、GIGAスクールの“想定外” なぜそんなに壊れるのか:小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)
10月27日に朝日新聞が報じたところによれば、徳島県教育委員会が手配した約1万5000台のWindowsタブレットのうち、3500台以上が故障で使えなくなり、授業に支障が出ているという。なぜこのようなことが起こるのか、そして教育デバイスに求められる現実解を考える。
なぜそんなに壊れるのか
小中学校で導入された1人1台端末の修理費については、22年から23年にかけて大きな問題となりつつある。埼玉新聞が昨年報じた例では、埼玉県久喜市のタブレット修理代が、1000万円を超えたという。埼玉県全体の話ではなく、久喜市だけでの話だ。修理費に国の補助はなく、市の独自予算で対応するという。
1年間はメーカー保証が付くが、それ以降の修理に関しては有償となる。20年度から段階的に導入が始まった1人1台端末も、2年目、3年目に入った昨年から今年にかけて、修理費負担が目に見えて膨らんできたというわけだ。
2年目以降の端末修理費に関しては、これまた自治体単位で方法論がバラバラである。いち早く端末をそろえたかった自治体では、保険加入が後手に回り、修理代を自治体負担するところも多い。一方で20年度導入を見送って翌年導入した後発の自治体では、端末購入と修理保険をセットで導入するところも多かった。
なぜそんなに壊れるのかと言えば、最大の問題は「机が小さい」に集約される。皆さんが子供の頃に使った学校の机を想像していただければいいと思うが、あの机のサイズは今もなお変わっていない。そこに紙の教科書とノート、プリント資料等に加えて、PCを置くわけである。当然乗りきれるわけもなく、一番奥に置かれたPCが落下するというわけだ。
サンワサプライでは端末故障防止グッズを多数販売しており、これが好評だというぐらい、端末が壊れているのである。
また単体の修理費も問題を大きくしている。導入で一番多いのがChromebookだが、これはコストダウンのために分解してパーツ交換で修理するということが想定されておらず、修理するとなればほぼ全交換となる。筆者も私物のChromebookを保険で修理に出したことがあるが、修理費の方が高いとして、代替として同仕様のChromebookが届いたことがある。電源ポートの破損などほんの少しの故障に見えても、基盤全交換となればそれなりの金額になる。
もう1つ指摘しておかなければならないのが、日本の場合、2021年までは電子教科書は各教科の授業数の1/2を超えて使用してはならないなど、電子教科書の扱いが厳しかったことだ。今は改正されて1/2以上使っていい事になったが、こうした制限から電子教科書だけで授業を行なっている先生は少なく、どうしても紙の教材との併用になる。先行して電子教科書が導入されていた諸外国では端末の故障率はあまり問題になっていなかったが、その原因は日本のみ、紙のとの併用が止められないことにもあるだろう。
徳島県の問題が異質なのは、もともと扱いが丁寧で故障率が少なかった高校生の端末が、自己崩壊という格好で大量に故障したことだ。幸い膨張しただけで、火災や火傷と言った被害が出ていないのが救いである。
現在は対策として、正常な端末を共同で使ったり、個人のスマートフォンで代用しているという。もともとGIGAスクール構想の端末導入メソッドには、「BYOD」(Bring Your Own Device)というものもあった。私物の端末を持ち込んで使用するという方法である。だがこれを導入したところは少なかった。
学校や教育委員会が全員同端末にこだわった理由は、個人がバラバラの端末を持ち込むと先生が指導しきれない、アカウント管理やアップデートといった保守が一括でできない、盗難の懸念が払拭できないといった課題があったからだ。だが今回の事故によって個人のスマートフォンでも代用できるという道筋が見えたのであれば、それはそれで未来があるのではないか。
トラブルに対してただひたすら現状に戻すのではなく、それはそれで飲み込んで次の手を探す。そうした柔軟な発想を子供達には求めているのに、大人ができないのなら、子供にだけそれを求めるのは都合がよすぎるというものだろう。
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