遠近両用メガネなのに見え方は“普通” AIを使ってパーソナライズする累進レンズ「Varilux XR」を体験した:分かりにくいけれど面白いモノたち(7/7 ページ)
フランスのバリラックスは、境目のない遠近両用レンズ、いわゆる「累進レンズ」を世界で最初に作ったレンズブランドだ。その新しいフラグシップ「Varilux XR」でメガネを作ってみた。
何というか、もうとても普通に見えるのだ。遠くを見よう、近くを見ようと意識することがなくなって、遠くも近くも当たり前に見える。もちろん、筆者は強度の近視だから、見えるといってもタカが知れているのだけど、生活に必要なものは見えるし、歩きながらスマートウォッチを確認して、また道路を見てという視線の移動にも違和感がない。目の端に見えたものにきちんと反応できるし、なんとなくモノを見るということが当たり前にできるようになった。もちろんPCで原稿を書きながら、手元の紙資料を読める。ちょっと視線を横に動かしてテレビを見ることも楽に行えるから、よそ見は増えたかもしれない。
レンズを購入すると、このような購入したレンズに関するデータが書かれたカードが渡される。このカードがあれば、同じ設計のレンズを作る際、検眼は必要なくなる。もちろん、フレームのフィッティングなどは、フレームが変われば別途必要になる。それにしても筆者の目、裸眼だとほとんど見えていないな
そういった実際の使用感を含め、Varilux XRシリーズは、一体何がすごいのかについて、出来るだけ具体的に書いてみたのだけど、眼鏡のレンズというのは、本当のところでは実際に体験してみないと分からないものだ。特に、今回のレンズは、徹底的に個人の目に合わせてパーソナライズして完成する製品なので、どのくらい伝わるか、あまり自信がない。
価格も、円安の影響もあるとはいえ、一番ベーシックなXR fitでも2枚セットで9万9000円。XR proを最薄型レンズで作ると2枚セットで28万6000円にもなるから、簡単に買えるものでもない(いずれも参考価格)。
それでも、この文章を読んで興味を持ってもらえたら、とにかくテストレンズを使った度数合わせだけでも体験してもらいたいと思う。従来の累進レンズとの違いや、現在のメガネ用レンズの達成がどのくらいのレベルにあるのかを知ってほしいと思う。実際に、フルオプションのメガネを使っている実感としては、XR trackにeyecodeのオプションを付けて、通常の薄型レンズを選んだ場合の、2枚1組17万5000円のタイプがリーズナブルに全ての機能を体感できるのではないかと思う。
もちろん、高価なレンズなので、作ってみて合わなければ作り直してもらえるサービスは付いている。それでも、きちんと度数を合わせてもらえて、細かい検査についても信頼できるメガネ店を選びたい。
結局、そこがちゃんとしていないと、「XR」シリーズの性能はフルに発揮できない。今回、筆者がお願いした目黒の伏見眼鏡店では、社長がレンズマニアのような方で、XRシリーズについても十分にそのすごさを理解されていた。そういう方に合わせてもらえると、かなり安心して任せられると思うのだ。
デジタルを使った検査もAIを使った設計も、結局はパーソナライズが正しく行われないと意味はない。その部分は人間の手に任されているというのが、メガネの面白いところであり、難しいところだろう。メガネを合わせる検査って、答えている自分でさえ、正しく答えられている気がしなかったりするのだから、そこを上手く汲んでもらえる店でメガネは作りたいと思うのだ。
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