生成AIを教育に活用する──業務効率化を目的とした生成AIの導入・活用が増える一方で、大学教育にも生成AIを役立てようという試みが出てきている。同志社大学は2024年4月から1年間、AIを使った学習支援の仕組みを整える実証実験を始める予定だ。
「個別最適化がやれるのが、生成AIのいいところ。学生の間違い方などは何パターン化に層別できると思う。それに合わせて教材を最適化していく。そこまでできれば本格的」──取り組みに携わる宿久洋教授(文化情報学部)は、生成AI活用の理想像についてこう話す。
同大による実証実験の狙いはどこにあるのか。予定している取り組みの内容と合わせて、宿久教授や谷村智輝副学長(教育支援機構長、経済学部教授)に詳細を聞いた。
講義の質問にAIで答える環境など整備 Azure OpenAI Service活用
まず、同志社大による実証実験の内容を整理する。同大は、学生による学習と、教員による教育の支援、双方をAIでどこまで支援できるかを検証するという。
実験に当たっては、大規模言語モデル「GPT-3.5」などのAPIを米Microsoftのクラウドで使える「Azure OpenAI Service」を活用し、生成AIの利用環境を整備。学生向けに、講義・教科書への質問などに回答できる環境などを、教員向けに課題やテストの作成補助ができる環境などを構築する想定だ。
対象となるのは、データサイエンスやAIに関する教育プログラム「Doshisha Approved Program for Data Science and AI Smart Higher Education」(同志社データサイエンス・AI教育プログラム、以下DDASH)の授業科目を受講する学生たちや、関連する教員たち。DDASHには法人内の高校3年生も受講できる科目があり、12月時点ではプログラム全体で計3256人が履修しているという。
「できるかできないか」ではなく「どれだけ大変か」検証
最初に取り組むのは、講義や教科書への質問にAIで回答する仕組みの整備だ。「現在は数千人規模の大規模な講義なので、質問への回答をインタラクティブにやるのはハードルが高い。現在は土曜日に複数のスタッフにオンラインで質問対応してもらっているが、限界がある。そこで、AIで24時間リアルタイムに対応できるようにし、対応し切れない部分は人に投げてもらう仕組みを整える」(宿久教授)
最初の取り組みを踏まえ、教材の作成補助など他の取り組みについても模索していくという。生成AIの活用を想定する用途としては、他にも「予習時の教科書の要約」「生成AIの利用ログに基づく、講義の改善」「採点の補助」などを挙げている。
ただ、実験で確かめるのは「こういうことがAIでやれるか」ではない。「実現できるかできないかだけでいえば、どれも実現できることだとは思う。問題はコスト感や規模感。かけられる労力やコストによって実現可能性が変わってくる。それを確認したい」(宿久教授)という。
システムの構築は以前から同校のITインフラ構築支援を手掛けてきたNTT西日本と、そのグループ会社であるNTT EDX(大阪市)が手掛ける。電子教科書を活用する場合は、NTT EDXのプラットフォームを活用する。実験を始めることになったきっかけも、NTT西からの提案があったからだったという。
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