「東大生や教員は、生成系AIにどう対応すべきか」東大副学長が声明 「組換えDNA技術に匹敵する変革」
「東京大学の学生や教職員が生成系AIに対してどのように向き合うべきか」――東京大学副学長の太田邦史教授が声明。
「東京大学の学生や教職員が生成系AIに対してどのように向き合うべきか、現在の状況を踏まえ、第一報として情報を共有したい」――東京大学副学長の太田邦史教授が4月3日、生成系AIの現状や付き合い方に関する声明を、東大のポータルサイトで発表した。
生成系AIは「教育・研究活動など大学の活動にも大きな影響が生じる」と想定。「どのようにしたら問題を生じないようにできるのか、その方向性を見出すべく行動することが重要」と述べている。
声明では、「ChatGPT」「BingAI」「Bard」「Midjourney」「Stable Diffusion」などを生成系AIの例に挙げ、これらは「平和的かつ上手に制御して利用すれば、私たちのwell-being向上に大きく寄与することができる」と展望する。
一方で、AIのリスクも指摘し、太田教授の専門分野である分子生物学でたとえると、「『組換えDNA技術』の登場に匹敵する変革ではないか」と指摘する。
インターネットの登場と匹敵か、それ以上の変革
ChatGPTについては「『検索』ではなく『相談』するシステム」だと指摘。さまざまなアプリと連動させることで「かなり作業を自動化できる」と述べ、「PCやインターネット、スマートフォンの登場時と同等、あるいはそれ以上の社会的な影響があると思う」と述べる。
一方で、「書かれている内容には嘘が含まれている可能性がある」ため「人間自身が勉強や研究を怠ることはできない」と指摘する。また、ChatGPTに送った質問の文章は学習される可能性があるため、機密情報や研究費の申請内容などを送らないことが重要と説く。
東大の学位やレポートは「学生本人が作成することを前提としている」が、「現状では生成系AIを用いて作成した論文・レポートだと高精度で見出すことは困難な状況」とし、教員に対して、「レポートや提出論文の審査に関しては、十分そのことを認識した上で評価を行う必要がある」と指摘。
東大生や教員ができることは?
生成系AIによって「教育・研究活動など大学の活動にも大きな影響が生じる」とも。現在の社会制度には生成系AIは織り込まれていないため、「失業者の増大、産業構造の変化、社会の階層化の進行など、様々な悪影響が生じる可能性がある」と指摘する。
とはいえ「生成系AIを利用禁止するだけでは問題は解決しない」とみており、「どのようにしたら問題を生じないようにできるのか、その方向性を見出すべく行動することが重要」と述べる。
例えば、「大規模言語モデルに「創発」(能力が突然飛躍的に向上すること)が起きた3原因を考察したり、生成系AIがもたらす様々な社会の変化を先取りし、積極的に良い利用法や新技術、新しい法制度や社会・経済システムなどを見出していくべき」と提案する。
同大は今後、生成系AIの活用法や問題点、改善策などについて、学内で議論の機会を設けるという。
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