OpenAI、New York Timesによる著作権侵害提訴は「法的根拠なし」と公式ブログで反論
OpenAIは、昨年12月にNew York Timesが同社とMicrosoftを著作権侵害で提訴したことについて「法的根拠がない」と公式ブログで主張した。AIモデルのトレーニングはフェアユースだというこれまでの主張を繰り返した。
米OpenAIは1月8日(現地時間)、米The New York Times(以下、NYT)が同社と米Microsoftを著作権侵害で提訴したことについて、公式ブログで「法的根拠がない」とし、その理由を説明した。
NYTは昨年12月、2社がNYTの記事を「数百万件コピー」してAIモデルをトレーニングした結果、同メディアと読者との関係が損なわれ、購読料や広告などによる収入も奪われると訴状で主張した。
訴状では、OpenAIの「ChatGPT」を実際に使ったという著作権侵害例を複数提示している。
OpenAIは、NYTが「全容を伝えていない」とし、特にChatGPTがNYTの記事をほぼそのまま再現した(regurgitation、吐き戻し)という主張については、NYTが吐き戻すようプロンプトを操作したと反論した。
また、AIモデルが新たな問題を学習して解決するには「人間の知識の膨大な集合体」にアクセスしなければならないとし、「トレーニングはフェアユース」に該当すると主張した。フェアユースとは、著作権で保護されている作品を著作権者の権利を侵害せずに利用する特定の方法だ。
その上で、WebサイトオーナーがWebクローラーによるデータアクセスをブロックできる方法も提供していると説明した。
OpenAIは昨年12月に英国貴族院に対しても「今日の著作権は、ブログ投稿、写真、フォーラムの投稿、ソフトウェアコードの断片、政府文書など、事実上あらゆる種類の人間の表現を対象としているため、著作権で保護された素材を使用せずにAIモデルをトレーニングすることは不可能」と説明(リンク先はPDF)している。
その上で、NYTとの建設的なパートナーシップを期待しているという。OpenAIは米Associated Press(AP通信)とはAPのニュースコンテンツアーカイブをOpenAIにライセンス供与する契約を結んでいる。
「われわれは、報道機関との継続的な協力を期待しており、AIの変革の可能性を実現することで、質の高いジャーナリズムを生み出す能力を向上させることができる」
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