2024年の生成AIはどうなる? サイバーエージェントなどIT企業4社の“本音” 「OpenAI強すぎる問題」に活路はあるか(3/3 ページ)
ChatGPTが注目を集め、生成AI導入の機運が一気に広がった2023年。日本で生成AIの開発、実装に携わるIT企業4社が生成AI活用の現状と2024年の生成AIの展望を語った。
「OpenAI強すぎる問題」は2024年も続くのか?
23年に“日本版LLM”の開発を行う上では「OpenAI強すぎる問題」が立ちはだかった。
OpenAIは、超膨大なデータセットを学習したGPTシリーズと、マイクロソフトによる支援体制という2つの強みを持ち、生成AIプラットフォームの覇権を握った。言語モデルとしての応答性能が優れているだけでなく、一般ユーザーや開発者が使いやすいようなUI/UX、料金の安さなどの点でも他社に勝っている。
こうした状況をサイバーエージェントの石上さんは「OpenAI強すぎる問題」と表現する。OpenAIのGPTシリーズは膨大なデータを学習しており、日本語の処理性能も高い。生成AIの実用上、これに対抗できるようなモデルを構築するのは困難といえる。
登壇した2社のうち、LLMを“使う側”のメルカリとSansanも、現在はOpenAIのAIサービスをよく使っているという。Sansanの猿田さんは「フロントエンドはコンポーネントの組み合わせで実現している。コスト面ではAzure OpenAIのGPT-3.5とGPT-4を併用している」と説明した。
一方メルカリでは「価格と性能はもちろん検討したが、OpenAIに決めた理由は、『Function Calling機能』があったためだ」と大嶋さん。Function Callingは、API経由でGPTの発話を制御する仕組みだ。この機能でGPTの会話の出力を成形できることが、商用展開時に良かったという。
使いやすさで選ばれて、ユーザーによる知見が蓄積し、さらに使いやすいサービスを廉価に提供できるようになるという構図では、OSにおけるWindowsや、検索エンジンにおけるGoogleの立場に近い。
では、今後もOpenAIの立場が揺るぎないものなのか。サイバーエージェントの石上さんは「必ずしもそうではない」と指摘する。
OpenAIがリードするLLMの競争は「オープンソース vs.クローズドソース」の戦いとも形容される。OpenAIはGPTシリーズのソースコードを非公開とする方針を貫いている。競合の米Googleや米Anthropicも同様に、クローズドソースの方針だ。
一方、LLMをオープンソースで公開し、開発者コミュニティーを育てて成長するアプローチを取る企業もある。Llama 2を提供するMetaは、その代表格だ。他にも一部スタートアップ企業たちも同様の動きを見せており、オープンソースLLMの開発が加速している。例えば、フランスのMistral AIは、オープンソースでGPT-3.5に匹敵する性能がでるというLLM「Mixtral 8x7B」を12月に発表した。
サイバーエージェントの石上さんは「Mistral AIのLLMは、GPT-3.5に匹敵する性能があると。こうしたものがオープンソースで登場すると、世界中のプロバイダーがモデルをホスティングしてAPIを提供することになる。すると競争が生じて価格が下がり、従来のGPT-3.5と同等の品質を、はるかに安い価格で利用できる世界になるかもしれない」と説明。「必ずしもクローズソース一択とはならないのでは」と見解を示した。
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