「モバイルバッテリー炎上」から考える、正しい廃棄方法 回ってきた“10年のツケ”:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
2月6日の午後6時過ぎ、山手線の車内でモバイルバッテリーが燃えるという事故があった。JR池袋駅に停車中の車内で、男性乗客のカバンに入っていたモバイルバッテリーから火が出たという。男性は「熱い」などと言いながらバッテリーを取り出し、床に投げ捨てたという。
どう捨てるのが正解か
モバイルバッテリーをはじめとする製品は、基本的にはバッテリーをリサイクルするのが原則である。従って一番確実なのは、メーカーが回収していないかを確認する事である。モバイルバッテリーの大手、AnkerやCheeroでは、自社製モバイルバッテリーを回収している。送料はかかるが、一番確実にリサイクルされるだろう。逆に今後モバイルバッテリーを購入する際には、自社製品を回収するメーカーかどうかも一つの判断基準となっていいはずだ。
また資源有効利用促進法に基づいて、小型バッテリーを回収する組織もある。一般社団法人JBRCは、会員企業の製品を全国にある協力店などを通じて回収している。大手家電量販店なども協力店となっているが、協力店はここから検索できる。
実際に協力店となっている近所の家電量販店に聴いてみたが、回収BOXみたいに勝手に投げ込めるような格好にはなっておらず、必ず店員に渡すようになっている。JBRC会員企業ではない製品は引き取らない事になっており、膨張したり破損したりしているもの、ハードケースに入っていないラミネートタイプも店頭では引き取りできない。会員企業の製品にはバッテリーのリサイクルマークが付けられているはずなので、まずはそのマークを確認してほしいとの事であった。
また昨今はAC電源も使えるポータブル電源が人気となっているが、JBRCは基本的に「小型」バッテリーの回収組織なので、ポータブル電源のような中型・大型製品は対象になっていない。こうした製品の回収は今のところ、メーカーに頼るしかないのが現状である。ポータブルバッテリー大手のECOFLOWでは、23年から同社バッテリーを回収するサービスをスタートさせた。今後バッテリーメーカーや輸入代理店等に対して、こうした回収を法的に義務付ける動きもあっていいだろう。
一番困るのが、JBRCでも回収しない製品の廃棄だ。自治体に問い合わせてもJBRCへ丸投げで、取り合ってくれないところも多いと聞く。こうしたケースでは、民間のリサイクル事業者を探すしかない。PCの無料回収などで検索すると、多くのリサイクル事業者が見つかる。こうした事業者の中には、PC以外にも多くの家電製品を引き取ってくれるところがある。案外モバイルバッテリーそのものはダメなところも多いが、イヤフォンやモバイル扇風機など、意外なものを引き取ってくれる。引き取りが確認できれば、こちらからは送料負担で送るだけなので、まずは調べてみるといいだろう。
フリマやオークションサイトで売ってしまえと指南するサイトもあるようだが、個人的には感心しない。買い取った方がきちんと最後に廃棄してくれるのかも分からないし、単に廃棄責任を他人に投げるだけという気がしてしまう。
この記事をご覧の皆さんも、この機会に身の回りにあるモバイル製品はどうやったら捨てられるのか、一度見ておくといいだろう。新興メーカーに見えて案外リサイクルマークが付いているものがあるかもしれないし、大手メーカーなのに輸入品ではマークがないものもあるかもしれない。
またお住まいの自治体の対応状況は、地域によってかなり違っているので、そちらのほうもチェックしてみるといいだろう。多くは自治体のサイトに情報があるはずだ。また「スーパー等の協力店に回収ボックスを設置」と書いてあっても、実際にはボックスがないケースもある。不法投棄を避けるためか、あるいはボックス内でのショートを避けるためか、現場レベルでは店員に直接手渡しの方法に変更されているケースがある。
充電式のモバイル・ウェアラブル製品は、使っている時はただひたすら便利なだけで、その製品が寿命を迎えるときのイメージはあまり持てないものである。今のうちから捨てることを考えておけというのはあまりにも早計だが、普通には捨てられないものであるという認識は持っておくべきだろう。
便利の裏にはそれなりのリスクを払う必要があるという事である。
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