通信品質は本当に改善したのか? ポジティブな話題が少ない「ドコモのいま」:房野麻子「モバイル新時代」(3/3 ページ)
2023年初頭から、ドコモの通信品質の低下が指摘されてきた。それに対しドコモは各種対策を続けていくと発表したが、未だに「つながりにくい」という声が聞かれる。ドコモはいまポジティブな話題が少ない状況にある。
KDDIの「Sub6」エリア拡大に対抗できるか
24年度は再び各社のネットワークに注目が集まるかもしれない。衛星通信の地上局との干渉問題が解消され、Sub6GHz帯の電波をいよいよフルに活用できるようになるからだ。
5G用の周波数として各社に割り当てられた「Sub6(サブシックス)」と呼ばれる3.7GHz帯、4.5GHz帯の周波数帯は、100MHz幅の大きな帯域幅を持ち、その1波だけで5Gらしい高速通信が可能となる周波数だ。ただ、3.7GHz帯については衛星通信の電波に干渉してしまうため、基地局の設置場所を地上局から離したり、電波の出力を抑えたりしてエリアをあえて狭くしていた。
この衛星干渉条件が23年度末に緩和され、24年度からは出力を上げられるようになる。KDDIは3.7GHz帯の周波数帯域を2ブロック持ち、23年度末までに3万4000局を建設予定。それによってSub6のエリアが2倍に拡大し、より高速・安定した通信を提供するとしている。
3.7GHz帯については4社とも割り当てられているが、ドコモだけは4.5GHz帯100MHz幅も割り当てられている。4.5GHz帯は衛星通信の干渉問題が少なく、エリア構築しやすかったはずだが、通信品質の不満がくすぶっており、これまで十分活用しているとは言いがたい。
ともあれ、24年はとうとう5Gの普及期になるだろう。ネットワーク品質もSub6がポイントとなってきそうだ。ドコモは、現状の通信品質で評価が高いソフトバンクやSub6で攻勢をかけるKDDIに対抗し、ユーザーの信頼を取り戻すことができるだろうか。
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