OpenAI幹部、社内メモでマスク氏による提訴を全面否定
イーロン・マスク氏がOpenAIとそのCEO、サム・アルトマンを契約違反で提訴した件について、OpenAIの幹部は社内メモでマスク氏の主張を全面否定した。
米OpenAIの共同創業者でもある実業家のイーロン・マスク氏が2月29日にOpenAIとサム・アルトマンCEOを契約違反で提訴したことについて、同社幹部は社内メモで「マスク氏の主張は現実を反映していない」と語った──。このメモを入手した米Axiosなど複数のメディアが3月1日に報じた。
マスク氏は、OpenAI設立時、アルトマン氏が「人類のためにAIを開発するオープンソースの非営利企業を設立する」と語っていたにもかかわらず、米Microsoftが出資するOpenAIが営利を追求しており、また、GPT-4をオープンソースにしていないのは契約違反だと主張している。
OpenAIはMicrosoftとの提携で、AGIの開発に成功した場合、AGIにはMicrosoftのライセンスは適用されなくなるという契約条件だが、GPT-4は既にAGIであり、ライセンスを適用するべきではないともマスク氏は主張する。
OpenAIのジェイソン・クォンCSO(最高戦略責任者)は社内メモで、マスク氏は過去に、OpenAIの過半数の株式を要求し、OpenAIと米Teslaの合併を示唆したことがあるとし、「いずれのアプローチもOpenAIのミッションに沿っているとは考えなかった」と語った。マスク氏は2015年のOpenAIの設立に参加したが、2018年には取締役を辞任した。
クォン氏は、「この訴訟の主張は、イーロンがOpenAIに関与し続けなかったことを後悔していることから生じている可能性がある」と語った。
Microsoftから支援を受けていることについては、「会社の運営について決めるのは私たちだ」とし、「私たちはMicrosoftと直接競合している。OpenAIはChatGPTとChatGPT for Enterpriseを提供し、MicrosoftはCopilotとCopilot for Microsoft 365を提供している」と語った。
また、GPT-4はまだAGIではないと主張した。「GPT-4は、AGIのような高度に自律的なシステムではない」という。
マスク氏の訴状について、米The Vergeなどはその問題点を指摘しているが、AGIが実現した場合、どうすべきかという議論を深めるきっかけの1つにはなりそうだ。
関連記事
- イーロン・マスク氏、米OpenAIとサム・アルトマンCEOを提訴 「営利追及するのは契約違反」
米国の実業家であるイーロン・マスク氏は、米OpenAIとサム・アルトマンCEOを契約違反でサンフランシスコの裁判所に提訴した。 - 英規制当局、MicrosoftとOpenAIの関係が“関連する合併状況”かどうかの調査開始
英政府競争規制当局の競争・市場庁(CMA)は、MicrosoftとOpenAIの関係が英国市場に影響する“合併状況”かどうか、利害関係者に意見を求めていると発表した。Microsoftのブラッド・スミス氏は「GoogleによるDeepMind買収とは違う」とポストした。 - 「Teslaを含む最先端AI開発組織は規制されるべき」とイーロン・マスク氏
全人類の利益になるデジタル知能の開発を目指して2015年に設立されたOpenAIの変化についてのMIT Technologyの記事を受け、同社を立ち上げたイーロン・マスク氏が、OpenAIはもっと透明性を高くすべきであり、(自身の企業である)Teslaを含むAI開発企業は規制されるべきだとツイートした。 - イーロン・マスク氏ら、人類に益する人工知能を目指す「OpenAI」立ち上げ アラン・ケイ氏も参加
ピーター・ティール氏やイーロン・マスク氏などのPayPalマフィアの面々やY Combinatorのサム・アルトマン社長らが、人工知能(AI)を人類への脅威ではなく、人類に益する存在に発展させることを目的とした非営利の研究機関「OpenAI」を設立した。起業家らやAWS、Infosysなどが総額10億ドルを投じる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.