写真を撮って電柱を“制圧”、報酬もらえる 東電が参画した位置情報ゲーム「ピクトレ」の狙い(2/2 ページ)
今回、紹介するのは、東京電力とシンガポールのGreenWay Gridが共同で開発した「PicTree〜ぼくとわたしの電柱合戦〜」。ゲームを通してインフラ管理と地域活性化を同時に実現しようとする試みです。
インフラ企業がWeb3領域に進出
ピクトレのようなサービスは、Web3やNFTの技術を応用することで、より魅力的なものになる可能性があります。例えば、DEPを単なるポイントではなく、その土地ならではの特別な価値を持つデジタルアイテムとして発行させることもできそう。他にもNFTホルダーだけが参加できるイベントを開催したり、NFTを地域クーポンと連動させたりすることで、報酬とゲーム性をより高める設計もできそうです。
つまりピクトレは、東京電力のようなインフラ企業がWeb3領域に進出した先駆的な事例ともいえます。従来のインフラ管理の枠組みにとらわれない発想で、ゲームの力を活用しユーザーを巻き込んだ新たな管理手法を模索していこうとしているわけですから。
一方で、サービスを持続的に運営していくためには、ユーザーの継続的な参加を促す工夫が欠かせません。ピクトレの面白さやインセンティブ設計が、ユーザーを飽きさせずに継続的な投稿を促せるかどうかは注目ポイントでもあります。例えば、投稿した写真がどのようにインフラ管理に役立ったのか、フィードバックを得られるようにすれば、ただの作業ではなくミッションを達成したという高揚感が得られるかもしれませんし、そこにさらに報酬が追加されるという形にしてもいいでしょう。
ピクトレは、まだこれから実証実験をする、正式サービス開始前の新しい取り組みですが、インフラ管理と地域活性化という2つの社会課題に挑む意欲的な試みとして、大いに期待が持てるサービスです。今後、同様のコンセプトを他の自治体やインフラ企業が取り入れることで、より多くの地域に広がっていく可能性もあります。
位置情報ゲームの可能性は、「Pokemon GO」(ポケモンGO)の世代を超えた大ヒットにより、イベントで街の光景が変わるというようなことで大きな注目を集めてきました。ポケモンGOが、現実世界を舞台にしたゲームで地域を活性化した成功事例であることはいうまでもありません。Pictreeも、インフラ管理という社会課題解決とゲーム性を組み合わせた新しい形のサービスとして、これが成功すれば、他の社会課題に応用できそうです。
他にも、位置情報ゲームとインフラの組み合わせということでは、先行事例としてインフラ危機から街を守るアプリ「TEKKON」があります。マンホールのふたなどの画像をユーザーが集めることで、点検というアクションにつなげていくわけです。TEKKONはこの3月に登録ユーザー数が10万人を突破し、集まったマンホール画像は300万枚を超えました。つまり、設計次第ではこういう活動は十分に“動く”のです。
このように、位置情報ゲームは、インフラ管理から地域おこしまで、様々な社会課題解決に活用できる可能性を秘めています。課題解決とエンターテインメント性を両立したサービスデザインが求められる分野ですが、こういった事例からより多くの企業や自治体が積極的に挑戦していくと、インフラの分野でもゲームの知見がより生かされていくことになるのではないかと思います。実際、私はすでに前橋市に行ってみたくなっています。
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