技術者「本当にやるの?」──わざと光を被らせるエフェクトを搭載した大胆なインスタントカメラ、富士フイルム「INSTAX mini 99」開発秘話:分かりにくいけれど面白いモノたち(6/6 ページ)
富士フイルムの「INSTAX mini 99」というカメラが面白いのは、それが久しぶりに登場した「写真とは光だ」ということを思い出させてくれるからではないかと思う。
「写真を撮る」楽しさは、こういうことではなかったか
カメラとしての「INSTAX mini 99」を改めて見ると、実はかなりの高機能カメラで、意図通りの写真を撮ることができる機能を備えている。60mm、F12相当のレンズを搭載し、ピントは、近中遠の3段階手動切替、シャッター速度は1.8秒〜1/400秒+10秒までのバルブモードを搭載した絞り優先AE。露出補正はプラスマイナス2段階、さらに室内撮影や夜間撮影時に人物と背景を両方キレイに撮れるインドアモード(スローシンクロ)や、子どもの動きなどにも対応するスポーツモード、二重露光などを搭載。
これに、フィルム感度はISO800相当、バッテリーはフル充電で約100枚撮影可能。フラッシュは自動調光・赤目補正・強制発光・発光禁止の設定が可能だ。
これを頭に入れておけば、写真を撮るのに慣れている人は、自在に思った通りの写真が撮れるし、カメラもそれに十分応えてくれる。欲をいえば、露出はマニュアルでの操作を可能にして欲しかったけど、実はマニュアル露出が可能だと、「カラーエフェクトコントロール」もかなりのところまで意図的に使えてしまう。その意味で、マニュアルが無いのは妥当な判断だとも思う。要するに、カッチリ撮れるカメラを作っておいて、その上で撮影者の意図を越える、または外す写真の面白さを提案しているのが、このカメラなのだ。
「カラーエフェクトコントロール」と「濃淡調整」がダイヤル式になっているのがうれしい。設定が分かりやすいし、とっさに切り替えやすいのだ。また、露出補正を「濃淡をコントロールするもの」と定義しているのも分かりやすくていいと思う。要するに、アンダーになれば濃く写り、オーバーになれば薄く写るという訳だ
そういうカメラで、しかもフィルムは安くないから、とりあえず撮ってみようというのは難しい。だから、とにかく考える。どう撮りたいか、何を撮りたいか、どういう光なら面白いか、光漏れは入れるか入れないか、そうやってある程度想定しつつ、プラスアルファを期待して「カラーエフェクトコントロール」のダイヤルを回す。
せっかく露出補正が付いているのだけど、「カラーエフェクトコントロール」の光は、その設定とは無関係にモードごとに一定。だから益々読めない。覚悟を決めてシャッターを押す。写真が現像されるのを待つ。「写真を撮る」楽しさは、こういうことではなかったかと、初めてカメラを手にした子ども時代を思う。
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