AI生成の“非実在美女”が、甘い言葉や愛国ワードで懐を狙う――お隣中国の最新AI事情(3/3 ページ)
ChatGPTやmidjourneyなどで火がついた生成AIブームから1年。ネットの壁を構築する中国でも、壁を超えてでもこれらを利用しようとする動きや、西側に負けじと中国でも生成AIやサービスが続々と登場している。バイトダンスのショート動画サービスなどでは、AIによって生成された非実在の動画配信者が一部の男性層を虜にし、お金を貢がせている。
愛国心を使ってモノを買わせる
「中国はロシアをいつも助けてくれて感謝してます」「中国に長く住んでいて中国の男性と結婚したいです」――いくつもの動画でロシア人ナターシャを名乗るアカウント「Natasha Imported food」が中国ラブを訴え、中露の友好としてチョコレートやキャンディーを買ってほしいと販売している。
ナターシャの親中情報発信に14万のフォロワーが集まり、美女の中国ラブに多くの人が信じて喜びの反応を示した。このアカウントにウクライナ人女性のOlga Loiekさんは「勝手に顔を使われ、顔をすり替えられて、あることないこと話している」「中国はニセモノ大国だ」と憤慨し話題になった。中露の友好にウクライナ人が使われるとはあまりにもひどい話である。
注目を集めた後は商品を販売するだけでない。Olga Loiekさんの件ではHeyGenというツールを活用していて、そのノウハウ販売や制作代行を行う企業もある。AIを使用して何もないところからリアルなスタイルの画像を生成するには、生成AIの扱いに慣れた人がアクションやシーンや服装などの特定のワードを複数入力し、さらに生成物に対して修正をかけていく必要があり、多くの場合数日、欠陥がないレベルにもっていくにはさらに日数を要する。
対して顔交換AIの活用であれば、自然な画像を生成するにも時間はかからず、専門的なスキルをそれほど必要とせず、量産可能でコストもかからない。Olga Loiekさんのように商売目的のために肖像権を侵害され、勝手に愛国者として使われるケースも増えてくるかもしれない。
今中国では国内市場がぱっとせず海外進出ブームが起きている。TikTokはライブコマースを世界展開しているし、TikTokだけでなくさまざまな企業がプラットフォームを展開し、そこに無数の企業が商品を販売しようと狙っている。日本でも不自然な生成AIによる美女がモノを売りつけながら大挙して押し寄せてくる、そんな未来がもうすぐくるかもしれない。
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