ChatGPT登場後に仕事急増も単価はダウン? 買いたたかれる「ビデオ編集」スキルの今後:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
ChatGPTをはじめとするAIの登場で、メディアではなくなる仕事・なくならない仕事といった特集が組まれた。だが昨今はこうした記事を見かけないのは、まだ具体的にAIの影響が観測できないからだろう。
「ビデオ編集」は大きく2つある
先の調査の意味するところは、AIの登場により、うまいこと生き残れる職業と、生き残れない職業が本当に出てきたということだ。
デザインは、良い/悪い、好き/嫌いが分かりやすいが、ビデオ編集はよい編集/悪い編集という評価の俎上(そじょう)にのぼりにくい。つまり今はまだできないだけで、将来的にはAIに取って代わられる可能性が高い事を示している。
ビデオ編集というスキルは、今やWebライター並みにちょこっと有料セミナーとかに参加すれば、誰でも身につけられると思われているようだ。数日で、あるいは数時間であなたも副業ビデオ編集者みたいなスクールの広告を目にするたび、一体何をどう教えればそれほど短時間のうちに編集ができるようになるのか、40年前にテレビ番組の編集者として社会人人生をスタートしたオジサンは考え込んでしまう。
そうした短期の学習でやれる仕事もそこそこあるのかもしれないが、もうかる話ではないだろう。映画のようにコンテンツそのもので客が呼べるものを作る人達の下には、セールスやコミュニケーションのために、作業としてビデオ編集を行うという裾野が広大に拡がるという図式である。
こうした「要約作業」としてのビデオ編集であれば、専門職やフリーランスに依頼するというケースは縮小するだろう。会社としては、「そこにお金がかかるなら、もう自分でやれば?」 という話になるからだ。実際AIの助けがあれば、動画からスピーチやインタビューの内容をテキストに起こしてサマリー化し、それ通りに編集するところまで行けるようになっている。まだ一般の人が、そのやり方を知らないだけだ。
一方でお金が取れる映像作品を作るという意味でのビデオ編集は、同じワードで表現していいのかというほどに、作業内容が違っている。そちらの名前を変えるか、あるいは作業としてのビデオ編集の方の名前を変えるかして、区別していく必要があるだろう。
コミュニケーション手法としてのビデオ編集は、今後メールやテキストチャットでのマナーやリテラシーと同じ文脈で、教育の中に組み込んでいく必要がある。それが社会の要請である以上、教育機関としては避けて通れない。大学でもレポートの動画提出というのは、今後コミュニケーション系の学部・学科では起こりうる変化だろう。WordやPowerPointと同じ土俵で、Premiere Proが語られる日もそう遠くない。
さすがに資格のようなものまではいらないと個人的には思っているが、もうすでに動画編集に関しての検定や資格試験は複数あるようだ。社会側がスキル判定として必要とするなら、こうした資格も質を変えて、就職時に注目される時が来るかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ビデオ編集が「未経験者にも手早く稼げる人気の職業」だって? YouTuberにも人気のビデオ編集ソフト御三家の方向性を探ってみた
ビデオ編集ソフトの御三家、Apple「Final Cut Pro」、Adobe「Premiere Pro」、Blackmagic Design「DaVinci Resolve(Studio)」の方向性を探ってみた。
Premiere Proに生成AI機能 動画の“尺拡張”や不要な部分の削除も OpenAIなど外部モデルもサポート
米Adobeは4月15日(現地時間)、動画編集ソフト「Adobe Premiere Pro」において、生成AIビデオツールを2024年後半に搭載すると発表した。映像クリップの生成拡張から、動画内にあるオブジェクトの追加・削除に対応するほか、Bロール用にテキストや画像から動画を生成するといった機能も実装予定としている。
カンペ見ても「カメラ目線」へ自動補正 動画のAI吹き替えツール「Captions」にPC版、実際に試してみた
日本語で話す動画を、英語に自動翻訳+アフレコしてくれるツール「Captions」。もともとはiOS版として提供されていたサービスだが、PC版(β版)が登場。AIを使った新機能も含め実際にテストしてみた。
Premiere Proにアップデート 絵文字対応などテキスト新機能 AIによる音声の自動タグ付けも β版公開
米Adobeが、動画編集ツール「Premiere Pro」の新機能を発表した。オーディオワークフローの改善や、フォント周りの機能追加を行った。パブリックベータ版として公開されており、Creative Cloudのサブスクリプションユーザーであれば誰でも利用できる。
「字幕大国ニッポン」でも役に立つ? DaVinci Resolve β版の文字起こし機能を試してみた
Blackmagic Designが、編集ツール「DaVinci Resolve」の次期バージョン18.5のパブリックβ版を公開している。新たに、AIによる文字起こし機能で日本語がサポートされたが、どの程度使えるのか実際に使って調べてみた。