もしもブラックホールに落ちたら…… NASAが再現動画を公開 近いほど“時間がゆっくり”になる現象など解説
もしブラックホールに落ちたらどうなるか?──米NASAは、その疑問の答えとなる“ブラックホールに突入する様子”を再現した動画を公開した。
もしブラックホールに落ちたらどうなるか?──米NASAは5月6日(現地時間)、その疑問の答えとなる“ブラックホールに突入する様子”を再現した動画を公開した。NASAが持つスーパーコンピュータによって制作したシミュレーション映像で、360度動画を含む複数の解説動画をYouTubeで公開している。
映像内で突入するのは、太陽の約430万倍の質量を持つ超巨大ブラックホール。これは天の川銀河の中心に位置するブラックホールの大きさに匹敵するという。動画はブラックホールから約6億4000万km離れた位置から始まり、ブラックホールの中にある光さえも脱出できないほど強い重力がかかる領域の境界「事象の地平面」を目指していく。
映像ではブラックホールが近づくにつれて、周りにある円盤や背景がゆがんでいく様子を確認できる。なお、映像は2パターンあり「事象の地平面をわずかに外れ、ブラックホールを往復して戻ってくる展開」と「事象の地平面を超えて、カメラが壊れる展開」の2通り再現している。
ブラックホールの突入時には、その強力な重力によって空間がゆがむため、観測者の位置によって時間の流れが変わるという。これは強い重力源の近くを移動している際には、時間の流れが遅くなるためだ。そのため、ブラックホールを往復した宇宙船と、そこから遠く離れた母船の船員を比べると、ブラックホール周辺から帰還した船員は母船の船員より“約36分若くなって”戻ってくることになるという。
再現映像の作成者でNASAの宇宙物理化学者であるジェレミー・シュニットマンさんは、この現象について「これはさらに極端になる可能性がある」と指摘。「クリストファー・ノーラン監督のSF映画『インターステラー』で描かれたように、ブラックホールが急速回転していた場合、船員はさらに数年若くなって戻ってくるだろう」と説明している。
このシミュレーションについてNASAは「通常のラップトップではこのシミュレーションを計算するには10年以上かかる」とし「今回使用したスーパーコンピュータ『Discover』ではその処理能力(12万9000プロセッサ)の0.3%を使うことで、5日間でこの計算を終えた」と説明している。
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