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「5Gでライブ中継」が現実に? スマホみたいな5Gトランスミッターで実現する映像の未来小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(3/3 ページ)

2024年3月に発売された5Gトランスミッタ、ソニー「PDT-FP1」をご存じだろうか。デジタル一眼「α」のアクセサリーとして販売をスタートし、カメラ量販店でも購入できることから、コンシューマー機のような扱いになっているが、実際にはプロ用機である。

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 局で待機している編集マンは、通常は撮影クルーが素材とともに戻ってくるまで、待機しておかなければならないわけだが、プロキシデータが先に届けば、編集に着手することができる。クルーが戻るまでのダウンタイムがなくなるという点で、速報性が出てくる。ただこれは、プロキシというデータの持ち方が発案された25年前からずっと描かれてきたシナリオだ。

 ハイレゾデータをそのまま扱う場合、大きなスポーツイベントでは編集ブースもスタジアム内に設置するという例も見られたところだ。だが5Gでハイレゾデータをアップロードすれば、編集マンはどこにいても、自宅からでも編集ができる。これは働き方改革としても、意味がある。

 コンテンツ配信においても、クラウドによる自動化が大きな意味を持つ。例えば大きなリーグの試合となれば、多くの国や団体、チームがそれぞれに複雑な権利を所有しており、またチーム内にも国外選手が数多くいることで、その関係はより複雑になる。

 Ciメディアクラウドではこのようなルールに基づいて、自動的に映像素材を必要な国や団体に配信する。この試合はこの選手が出ているからこの国へ、あるいはこの団体へ、といった格好だ。

 もしこれを人間が手動で素材管理を行っていたら、何らかのミスや誤解で素材が来ないことを連絡しても、連絡した先で権利関係を確認してからファイル送付となる。また時差もあり、連絡しても応答がないといったことも起こるだろう。それでは公開のタイミングを逃してしまう。複雑な権利処理が絡むほど、高度な自動化には意味がある。

機材の柔軟性がもたらすメリット

 プロクオリティーの映像が5Gを経由してアップロードできるだけで、クラウドからのライブ配信は現実的な話となる。一方でこうしたソリューションは、専門機材1つ、1社のテクノロジーで済むような時代ではなくなった。「PDT-FP1」は素晴らしい端末だが、普通のスマホに映像入力ができるなら、それでも代用できるという柔軟性がある。これは、大規模なプロジェクトや放送局、大手プロダクションでなくても、こうした技術を利用できるという意味でもある。

 どういうピースでシステムを組み上げるか。ソニーは通信会社と組んで実動するシステムを作っているが、バラバラのピースから組み上げることもできる。逆に各ピースを作る企業は、どことでもつながれるように設計しなければならない。このためにコア技術をオープンソース化するという流れもまた、「つながる」をウリにする時代において、当然の対応という事になる。

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