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なぜ360度開くスーツケースの素晴らしさは伝わりにくいのか? エース「プロテカ360」とその製造過程分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

私は、エースの「プロテカ360」を愛用しているのだけど、これは360度ファスナーが開くので、使うたびに縦にも横にも開閉できる素晴らしさを実感している。今回は北海道赤平市にある工場を訪ね、プロテカの製造工程を探った。

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真空成型で成型されたシェル。外側と内側は同じ樹脂のバージン材とリサイクル材、それを貼り合せて成型という過程が同時に行える

 この真空成型が面白いのは、2種類の素材を、それぞれ薄いシート状にして重ねてから成型していたことだ。表側は、昭和生まれの方にはお馴染、「象が踏んでも壊れない筆箱」でも使われているポリカーボネートとABS樹脂を混ぜたオリジナル樹脂。外側にはバージン材を使用し、内側には真空成型後にシートの不要部分をカットして粉砕したリサイクル材を使っているのだ。これなら、見栄えの良い仕上がりにしつつ、リサイクルも行える。

 そして、素材を二層構造のまま成型するのには、この「真空成型」が必要になる。抜き型のない成型方法だから、形の自由度も高いのではないかと思われる。「プロテカ」シリーズのシンプルだが特徴のあるデザインは、こうして作られているのだろう。空港の荷物受け取り口から出てくる際に、似たようなスーツケースの中で、ちゃんと見分けが付いたのは、この成型方法にも秘密があるのかもしれない。


こちらは、射出成型の作業工程

 成型については、もう1つ、シェルの素材全てがリサイクル材で作られている「プロテカ マックスパスRI 2」が「射出成型」で作られる工程も見せてもらった。こちらは、赤平工場と同じく北海道内にある資源リサイクル業者から提供された廃棄自動車などの再生材を使ったサステナブルなスーツケース。溶融した素材を金型に流し込み、型締め圧力1300t(トン)の力を持つ成型機で圧縮成型したら、冷却後に金型を開いてロボットで取り出すという過程で作られていた。


廃棄された自動車の内装パーツ(70%) と、物流パレット(30%)で作られた「プロテカ マックスパスRI 2」の素材。これを溶融して射出成型でシェルを作る

 ほとんど何でも見せてもらえる工場見学ツアーだったが、金型だけは撮影禁止となっていて、当然ながら、その重要性を改めて知った。面白かったのは、真空成型では、不要部分を切り取る工程があるのだが、そこで出た端材を粉砕しリサイクルするための粉砕機は、防音用の壁面で覆われていたこと。中はとんでもなくうるさいそうで、確かに、外にいてもものすごくうるさかった。粉砕時にそれくらいの音が出るくらい、丈夫な素材なのだ。


熱したマグネシウム合金の棒材を曲げてフレームを作っているところ。一般的なアルミではなく加工はしにくいが強度の高いマグネシウム合金をフレームに使うのは赤平工場ならでは

 私が使っているプロテカ360は、フレームのないジッパー開閉タイプだが、金属フレームを使ったスーツケースも、まだまだ人気がある。フレームの製作過程も見せていただいた。

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