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ニッチだが奥深い「映像伝送」の歴史 コンピュータ・グラフィックスからIP伝送まで小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(3/4 ページ)

映像伝送の歴史について、前回はアナログからデジタルまでの変遷をお伝えした。今回はコンピュータ画像の伝送(録画)と、普及が進むIP伝送についてまとめてみる。

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HD時代の幕開けとIP伝送

 00年代初頭のデジタル放送開始とHD(デジタルハイビジョン)時代の幕開けは、ソニーのデジタルベータカム一択となった。伝送方式もHD-SDIに一本化されており、4Kの登場まではほぼこれだけだった。

 一方で記録メディアのほうは、03年頃から脱テープの動きが加速する。ソニーはSD解像度ながらも独自ディスクに記録する「XDCAM」を立ち上げ、05年には「XDCAM HD」としてハイビジョン対応した。04年にはパナソニックがメモリ記録型の「P2」を立ち上げた。


NAB会場でXDCAMをアピールするソニーブース(NAB 2004)

NABで登場したパナソニックのP2デッキ(NAB 2004)

 放送のデジタル化により、番組送出は徐々にVTRからビデオサーバへシフトしていくわけだが、そうなると放送局への納品や素材持ち込みはテープだけではなく、デジタルメディアやファイル転送によるデータ納品も可能になっていった。とはいえそれらは記録メディアの話であり映像伝送ではないので、また別の機会に譲ることとする。

 13年に東京オリンピックの開催が決定し、4K放送実現へ向けて多くの機材やシステムの開発が活発になっていった。4KのSDI伝送はすでに前稿で述べたところだが、これまでは放送で注目されてこなかったIP伝送が一躍注目を集めるようになった。

 それというのも、4Kの伝送では3G-SDIケーブルが4本必要になることから、結線が煩雑になるばかりか、ケーブル重量も4倍になる。そうなると4K中継車の重量が重すぎて山越えができないという、バカバカしくも深刻な問題があきらかになったからだ。

 一方IP伝送であれば、1本で済む。IP伝送は通信業界を中心に「SMPTE 2022」として国際標準規格化されてきており、14年には「2022-5」及び「2022-6」としてベースバンド(非圧縮)伝送が規定されたことで、放送業界で一気に注目を集めた。

 IPに商機ありとして、15年あたりから多くのメーカーが殺到した。同年には12G-SDIも実用化されたが、まだ国際標準規格ではなかったため、対応機材が少なかった。

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