もっとも人間の皮膚を切り裂く「紙の厚さ」 デンマークの物理学者が特定:Innovative Tech
デンマーク工科大学に所属する研究者らは、最も切り傷になりやすい紙の厚さを調査した研究報告を発表した。
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このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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デンマーク工科大学に所属する研究者らが発表した論文「Competition between slicing and buckling underlies the erratic nature of paper cuts」は、最も切り傷になりやすい紙の厚さを調査した研究報告である。
この研究では、ティッシュペーパーや雑誌、オフィス用紙、本のページ、名刺、写真プリントなど、さまざまな種類と厚さの紙を使用。実験方法として、人間の皮膚を正確に模倣するとされる弾道ゼラチン「スラブ」を用い、小型ロボットを使って異なる角度で紙サンプルをゼラチンに押し付けた。
実験の結果、最も危険な状況は65μm(0.065mm)の厚さの紙がゼラチンスラブに15度の角度で接近した場合であることが判明した。この厚さの紙は、ドットマトリックスプリンタや科学雑誌の印刷に一般的に使用されている。
この特定の厚さの紙が最も切りやすい理由は、その物理的特性にある。65μmの紙は、接触時に大きく変形するほど薄くはなく、かつ圧力が紙全体に分散されてしまうほど厚くもない。このバランスが、紙の切れ味を最大化している。
研究チームはこの発見を応用し、廃紙を利用したリサイクル可能なナイフを開発した。「Papermachete」と名付けられたこのナイフは、65μmの厚さの紙で作られた刃を持つ。このナイフはリンゴ、キュウリ、鶏肉などを切ることができ、その効果を実証できた。ただし、水分に弱いという欠点がある。
Source and Image Credits: Sif Fink Arnbjerg-Nielsen, Matthew D. Biviano, and Kaare H. Jensen. Competition between slicing and buckling underlies the erratic nature of paper cuts
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