河野太郎氏に、スタートアップ著名起業家が直談判 newmo青柳氏、SmartHR創業者宮田氏らとの対談、河野氏は何を答えたか(3/4 ページ)
総裁選にも出馬する河野太郎デジタル大臣が、ライドシェアスタートアップnewmoの青柳直樹代表、SmartHR創業者で株式報酬SaaSを手掛けるNStockの宮田昇始代表らと対談。要望ぶつけるスタートアップに何を答えたか。
AI・データセンターで変わった再エネ・原発活用
澤山氏:われわれCoral Capitalは今8年目で、4つのファンドを運営しています。1号ファンドの現在のトップはSmartHRで、2号ファンドのトップが核融合を開発している京都フュージョニアリング社です。時価総額ベースでは現在、最も成長している企業となっています。
京都フュージョニアリング社には2019年ごろに投資しましたが、当時はまだ核融合はそれほど話題になっていませんでした。その後、急速に世間の注目を集め、政府からも追い風が吹き、今では日本発で世界で活躍する企業に成長しています。顧客のほとんどが世界の大手企業だと思います。
河野氏:日本の電力需要は2007年に約1兆kWhでピークを迎え、その後17年連続で下がっています。これは人口減少と省エネの影響です。私は、このまま行けば2050年には需要が8000億kWhくらいになり、再生可能エネルギーの導入スピードを今の倍くらいにすれば、2050年に約8000億kWhになると考えていました。これでほぼ行き来できるだろうと。そこで脱原発という話になっていたのです。
しかし、AIとデータセンターの影響で、2050年の需要予測が1兆4000億kWhといわれるようになり、話が変わってきました。再生可能エネルギーは8000億kWh入れられても、原発を再稼働しても1兆kWhにしかなりません。すると4000億kWh足りないことになります。
おそらく省エネが進み、データセンターやAIの効率も上がっていくので、1兆4000億kWhは多分上限で、そこまでは下がるでしょう。しかし、どこまで下がるかは分かりません。一方で、化石燃料はやはり最近の台風や風水害を見ると使用を減らさざるを得ません。
残りの4000億kWhをどう埋めるかという点で、水素、アンモニア、核融合、CCS(二酸化炭素回収・貯留)といった技術が注目されています。あらゆる可能性に賭けて、どれが現実的になるかを2050年までに見極めていく必要があります。
実は核融合にも、トカマク型やレーザー型など、いろいろなアプローチがあります。例えば、米国では(青色LEDを開発した)中村修二教授がブルーレーザー型の核融合に取り組んでいます。その部品を私の地元である茅ヶ崎の由紀精密というメーカーが、非常に高度な微細加工技術を駆使して供給しているのです。このように、核融合の裾野は非常に広いと思います。
私が欧州のいくつかのスタートアップを見て話を聞いてびっくりしたのは、創業2年目で米軍から注文が来て従業員を500人増やし、その次の年にNATO軍から注文が来て2000人規模になったという話です。現在、S&P500に入っている米Palantirも、米軍との取引が大きかったようです。
つまり、安全保障上必要な技術だと認められると、欧州でも米国でも、そこに軍のお金が流れ込んで、一気に成長するのです。最も顕著なのは多分イスラエルです。モサドが運営しているファンドにプレゼンをしてもらうと、驚くような技術がたくさんあります。
例えば、イスラエルでもオレオレ詐欺が多いそうで、電話で話している声を聞いて、その人の顔を描き出すという技術があります。音を聞けば、その音を発している部分がどのように空洞になっているかが分かるので、顔を描けるというのです。実際にやってもらったところ、なんとなく似ていました。
こういった安全保障関連の技術に、自衛隊や防衛省の予算を投入することも考えられます。昔は軍事技術がGPSやインターネットとして民間に転用されましたが、今は最初から民生用か軍事用か分からない、いわゆる“デュアルユース技術”が多いのです。
これが使えるとなれば、日本も防衛省の予算を投入する可能性があります。防衛予算は今後5年間で43兆円という話になっていますので、そういった資金の活用もあり得るでしょう。
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