“レガシーシステムモダン化委員会”始動 IPAが資料公開 「全銀ネット」「グリコ」などの障害に対策検討
情報処理推進機構は、経済産業省が立ち上げた「レガシーシステムモダン化委員会」の説明資料を公開した。
情報処理推進機構(IPA)は9月30日、経済産業省が立ち上げた「レガシーシステムモダン化委員会」の説明資料を公開した。2023年10月に発生した全銀ネット障害や、24年4月に起きた江崎グリコのシステム障害を問題事例として挙げ、レガシーシステムが抱える課題などをまとめている。
公開したのは、9月12日に開催したレガシーシステムモダン化委員会の第1回会議の資料。同委員会は、産業界がレガシーシステムを脱却するために、その現状や課題を明らかにして対応策を検討するために立ち上げた。
資料では、レガシーシステムからの移行が進まない企業について「経営層の関与が薄く、改修して利用し続けた方が安全であると判断される割合が多い」と指摘。社内に設けた情報システム部門についても「これまでの付き合いのあるベンダー企業からの提案をそのまま受け入れてしまいがち」などの課題を挙げている。
また、大手ユーザー企業などではレガシーシステム脱却が進んでいる一方で「2〜3年以内に着手しないと自社事業や企業経営が大きく傾く」などの危機意識が非常に薄い企業もあり、経営層の意識が二分化しているとも言及。他にも「AIなどのデジタル技術に注目が行き過ぎ、レガシーシステムを手掛けることができる指導者・技術者が急減している」などの問題も生じている可能性があるとしている。
これらの課題に対して、同委員会では「現状の可視化」「共通領域の標準化、業務のFit to Standard」「システム刷新・移行、データ活用の技術開発」の3つの方向性での対処を提案。ソフトウェアのモダン化を進めるべく、6月に立ち上げられた「ソフトウェアモダナイゼーション委員会」とも連携し、ソフトウェアのモダン化を進めるための議論を進める予定。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
グリコ、チルド食品の出荷停止を延長 5月中旬→「未確定」に
江崎グリコは1日、システム障害によって出荷業務を停止しているチルド食品について、停止期間が延びると発表した。再開時期は「未確定」という。
「全銀システム障害」とは何だったのか 解明まで時間がかかった理由と、待ち構える“茨の道”とは
2023年で最もインパクトがあったトラブルの1つに全銀システム障害がある。「なぜ発生したのか」「何が起きているのか」「どこに向かうのか」の3つのポイントについて、いま日本の金融業界で起きている変化を交えて整理したい。
AIの安全性評価ガイドライン公開 IPAと国などが設立したAISIから
AI開発者・提供者向けに、AIの安全性などを評価する「AIセーフティ評価」の観点や手法をまとめたガイドブックをAISIが公開した。
AIの安全性を“攻撃者視点”で評価するガイドライン IPAなどが無料公開 LLMへの8つの攻撃手法を紹介
情報処理推進機構(IPA)が国などと協力して設立した「AIセーフティ・インスティテュート」 (AISI)は、AIシステムの安全性を評価するガイドライン「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」を公開した。
911につながらない──米国で起きた緊急通報のシステム障害 窮地を救ったのは“170年前のテクノロジー”
米マサチューセッツ州で警察や消防を呼ぶための緊急通報ダイヤル911のシステムに障害が発生し、一時的に通報電話がつながらなくなった。この騒ぎの中で脚光を浴びたのは、昔ながらの赤い電信ボックスだった。







