若い頃のいじめ被害→長年にわたって脳構造が変化 2000人以上を調査 男女で異なる変化も:Innovative Tech
アイルランド王立外科医学院などに所属する研究者らは、慢性的ないじめ被害が青年期から成人初期にかけての脳発達に及ぼす影響を調査した研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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アイルランド王立外科医学院などに所属する研究者らが発表した論文「Bullying and Early Brain Development: A Longitudinal Structural Magnetic Resonance Imaging Study from Adolescence to Early Adulthood」は、慢性的ないじめ被害が青年期から成人初期にかけての脳発達に及ぼす影響を調査した研究報告である。
この研究では、2094人の参加者(うち女性1009人)を対象に、14歳、19歳、22歳の3時点でMRIスキャンを実施し、いじめ被害の経験を調査して脳の構造的変化の関連を分析した。いじめ被害の経験では、悪口や社会的排除、身体的暴行などのアンケートに回答してもらった。
研究の結果、慢性的ないじめ被害は広範囲にわたる脳構造の発達変化と関連していることが明らかになった。具体的には、調査した脳構造のうち49の領域で有意な変化を観察できた。これらの領域には、記憶、学習、運動機能、感情調節をつかさどる部位が含まれている。
皮質下領域では、被殻と尾状核、側坐核、扁桃体、海馬などで体積増加が見られた一方、小脳と嗅内皮質、島皮質では体積減少を観察できた。これらの変化は、感情処理や社会的相互作用に影響を与える可能性がある。例えば、感情のコントロールや、ストレス管理能力、社会的な報酬に対する反応などに影響を及ぼす可能性を示唆している。
また、性差に関する分析では、いじめ被害の影響に男女差があることも明らかに。女性では感情処理に関わる領域でより多くの体積変化が見られたのに対し、男性では運動や感覚に関わる領域でより多くの変化を観察できた。
これらの結果は、いじめ被害の影響が性別によって異なる可能性を示唆しており、今後のいじめ対策や介入方法の開発において、性別を考慮したアプローチの必要性を示している。
Source and Image Credits: Michael Connaughton, Orla Mitchell, Emer Cullen, Michael O’Connor, Tobias Banaschewski, Gareth J. Barker, Arun L.W. Bokde, Rudiger Bruhl, Sylvane Desrivieres, Herta Flor, Hugh Garavan, Penny Gowland, Antoine Grigis, Andreas Heinz, Herve Lemaitre, Jean-Luc Martinot, Marie-Laure Paillere Martinot, Eric Artiges, Frauke Nees, Dimitri Papadopoulos Orfanos, Luise Poustka, Michael N. Smolka, Sarah Hohmann, Nathalie Holz, Nilakshi Vaidya, Henrik Walter, Gunter Schumann, Robert Whelan, Darren Roddy. Bullying and Early Brain Development: A Longitudinal Structural Magnetic Resonance Imaging Study from Adolescence to Early Adulthood. bioRxiv 2024.09.11.611600; doi: https://doi.org/10.1101/2024.09.11.611600
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