火山灰に埋もれた親子の遺体→実は他人同士だった 古代都市ポンペイの遺体をDNA解析 歴史の誤りが判明:Innovative Tech
イタリアのフィレンツェ大学や米ハーバード大学などに所属する研究者らは、古代都市ポンペイの火山噴火で埋没した人たちに関する歴史が、DNA分析により書き換えられることとなった研究報告を発表した。
Innovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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イタリアのフィレンツェ大学や米ハーバード大学などに所属する研究者らが発表した論文「Ancient DNA challenges prevailing interpretations of the Pompeii plaster casts」は、古代都市ポンペイの火山噴火で埋没した人たちに関する歴史が、DNA分析により書き換えられることとなった研究報告である。
西暦79年、イタリア南部のヴェスヴィオ山が噴火し、小さなローマの町ポンペイとその住民たちを埋没させた。このポンペイ噴火は灰の層で全てを覆い、多くの遺体を保存することとなった。19世紀には考古学者たちがこれらの空洞に石こうを流し込んで等身大の像を作る手法を開発し、多数の石こう像を制作している。
研究チームは、修復中の86体の型のうち14体に焦点を絞り、石こう型と混ざった断片化された遺骨からDNAを抽出した。14体の石こう像を調査し、そのうち5体から骨のDNAを抽出して分析を行った。その結果は、これまでの解釈を完全に覆すものであった。
金のブレスレットを身につけ、膝の上に子供を抱いていた大人は、長年その子供の母親だと考えられてきたが、DNA分析により、実際には子供とは血縁関係のない成人男性であることが判明した。
また、抱き合って亡くなったとされ、姉妹あるいは母娘と考えられていた別の2体についても、少なくとも1体は遺伝的に男性であることが判明した。
さらにDNA分析により、ポンペイの人々が多様なルーツを持っていたことも明らかになった。特に多くの住民が東地中海地域からの新しい移民の子孫だったことが判明。これは古代ローマ帝国が予想以上に国際色豊かな社会だったことを示している。
(関連記事:古代文献に登場する「井戸に投げ込まれた伝説の男」 その正体は“生物兵器”か? 800年後の今、DNA解析)
Source and Image Credits: Pilli, E., Vai, S., Moses, V. C., Morelli, S., Lari, M., Modi, A., Diroma, M. A., Amoretti, V., Zuchtriegel, G., Osanna, M., Kennett, D. J., George, R. J., Krigbaum, J., Rohland, N., Mallick, S., Caramelli, D., Reich, D., & Mittnik, A.(2024). Ancient DNA challenges prevailing interpretations of the Pompeii plaster casts. Current Biology. https://doi.org/10.1016/j.cub.2024.10.007
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