Google、司法省のChrome売却要求に反論 独自是正案を提出
米司法省とGoogleが争う独禁法訴訟で、Googleは独自の「Proposed Final Judgment」(是正案)を裁判所に提出した。司法省が11月に提出したChromeとAndroidの売却を含む是正案は「過激で介入主義的」としている。
米Googleは12月20日(現地時間)、米司法省に提訴された検索サービスを巡る米独禁法訴訟で、コロンビア特別区連邦地裁に独自のProposed Final Judgment(最終判決案、以下「是正案」)を提出した(リンク先はPDF)。
原告の米司法省は11月、Googleがオンライン検索市場における独占を違法に維持していたとの連邦地裁の判決を受け、GoogleにWebブラウザのChromeとAndroid OSの売却を強制するよう連邦裁判所に求めた。判決では、Googleが検索市場における支配的な地位を利用して、競合他社の排除や消費者の選択肢の制限を行っていたと認定された。
事業の売却だけでなく、AppleやMozillaとの、WebブラウザでGoogle検索をデフォルト検索ツールとする契約や、Android端末メーカーにGoogleのアプリをプリインストールさせる取り決めの排除、検索データのライセンス供与も求めた。例えば、Appleとの契約では、iPhoneのデフォルト検索エンジンとしてGoogle検索が設定されているが、これを解除することで、ユーザーが自由に他の検索エンジンを選択できるようにすることを求めている。
Googleは司法省の要求を「過激で介入主義的」と批判し、米国の消費者と技術的リーダーシップを損なうものだと反論した。
同社は、ChromeとAndroidが人々に愛され、日常生活に役立つ製品であるとし、その売却はプライバシーとセキュリティを危険にさらし、AIなどの分野におけるイノベーションを阻害すると主張する。
Googleが20日に提出した是正案は、司法省の要求とは大きく異なり、ChromeとAndroidの売却と検索データのライセンス供与は含まれていない。主な内容は以下のようになっている。
- Webブラウザ契約における柔軟性:AppleやMozillaなどのWebブラウザ企業に、例えばiPhoneとiPadなど、異なるプラットフォームで競合他社の検索エンジンを選択できる柔軟性を与える。また、契約に1年ごとにデフォルト検索エンジンを変更できることを保証する。
- Android契約における柔軟性:端末メーカーがGoogle Playを含むGoogleアプリをプリインストールするかどうかを自由に決定できるようにする。つまり、Google製以外のアプリストアやマップアプリをプリインストールできるようになる。
- 監視とコンプライアンス:政府にユーザー体験に対する広範な権限を与えることなく裁判所の命令を順守するための強固なメカニズムを設ける。
Googleは、これらの提案がパートナーにコストをかけ、消費者に利益をもたらしてきたイノベーションを阻害する可能性があるとしつつ、これらの提案が裁判所の判決に十分に対応するものであり、米国のプライバシーとセキュリティを危険にさらしたり、技術的リーダーシップを損なったりすることなく実現できると主張する。
今後、裁判所は両者の提案を検討し、2025年の夏ごろに最終判決を決定する。Googleは裁判所の判決に控訴する意向を示しており、2020年に始まったこの法廷闘争は、長期化する可能性がある。
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