もはや“AIカメラマン” 遠隔から自動撮影に目的が変わってきた「PTZカメラ」の今:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/3 ページ)
パン・チルト・ズームの3機構を備えたカメラを、俗に「PTZカメラ」という。監視用途などの業務向けとして長らく使われてきたが、昨今は発展目覚ましいAI技術と組み合わせることで、もはや人が操作しない、自動撮影カメラという方向へ進化してきている。ここではInter BEE 2024で見る事ができた、PTZカメラの進化についてまとめてみたい。
2ショットや屋外での合成にも対応するパナソニック「AW-UE160」
パナソニックのハイエンドPTZカメラ「AW-UE160」は、24.5mmスタートの光学20倍ズームレンズを搭載する4Kカメラだ。1型の高感度MOSを搭載し、画像処理エンジンはGH6と同等のものを搭載した。またAFには、位相差AFとコントラストAFを組み合わせた新AFを搭載している。さらには光学式と電子式両方の手ブレ補正を搭載するなど、もはや普通のデジタルカメラと変わらない。
今年のInter BEE 2024で初めて一般公開されたのが、UE160の新しい自動追尾機能だ。PCで操作するUIによって、人物に対して自由な構図を設定できる。例えば左肩にはめ込みを行う前提で、被写体を左寄りにしたまま、自動追尾となる。
また2ショットが設定できるのは新しい。2人の距離が近づいても離れても、必ず2人がフレーム内に収まるように自動でズームする。この機能アップデートのリリース時期は、25年第4Qごろになる見込み。
PTZカメラをコントロールするには、従来通りハードウェアコントローラーを使う事もできるが、パナソニックが力を入れているのがPTZカメラを一元制御するソフトウェアプラットフォーム、「Media Production Suite」だ。
このプラグインとして、スイッチャー機能を実現する「Video Mixer」も展示された。23年のInter BEEではプロトタイプだったが、今年すでに発売が開始されている。もっとも注目すべきは、AIで人の形を切り抜く「AI Leying」だ。
従来人間の合成には、背景をグリーンやブルーにしてクロマキーを用いる必要があった。これは単色の背景を検出してマスクを作ることで、合成を可能にしてきた技術である。
一方AI Keyingはその逆で、人物の形をAIが認識して、その形でマスクを作る。つまり背景に何があっても関係ないのである。この効果は絶大で、通常のスタジオセットのままで人物合成ができる。
従来ニュース番組では、お天気情報になるとキャスターがグリーンバックのコーナーへ移動して、背景に天気図を合成していたが、そうした移動も準備も必要なくなる。またキー信号は別途スイッチャーへ出力もできることから、既存のCGシステムやテロッパーとの合成にも対応する。
背景もカメラと連動して動くバーチャルスタジオシステムにも拡張可能で、AI自動追尾とAI Keyingで、大規模な省人化と省力化が可能になる。ローカル局には魅力的なソリューションだろう。
また従来はグリーンバックのセットを組まなければ難しかった屋外での人物合成も、簡単に実現できる。PTZカメラを外へ持ち出しという使い方が、だんだんアリになってきた。
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