地震発生! 直後と避難時で違った“必要な情報源” 宮崎在住者が2度の大規模地震で悟ったこと:小寺信良のIT大作戦(2/3 ページ)
1月13日、筆者の住む宮崎県宮崎市は、震度5弱の大規模な地震に見舞われた。発生したのは午後9時19分で、避難するにしても、困難を伴う時間帯だ。しかも、発生後に情報が二転三転し、正確な情報を把握することが困難だった。今回の地震の体験から学んだ事を、皆さんに共有しておきたい。
緊急情報の効果を整理してみると……
緊急情報は、テレビ・ラジオなどの放送メディアや、ネットメディアを通じて送られてくる。複数台のテレビやラジオ、スマホなどを動員して、情報の伝わり方を調べてみた。
テレビはNHKと民放1局が臨時報道番組に切り替わり、入ってくる情報を繰り返し伝えている。この手法は、ライブで番組が動いており、情報が入り次第伝えられるのだという安心感があった。
一方別の民放は、通常番組放送にL字型のデータ放送を組み合わせて、テキストで情報を流していた。だがこのテキスト情報がいつの情報なのか、最新の情報に切り替わるのかといった不安があった。やはりアナウンサーが顔出しで、ライブで止まる事なく、繰り返し情報を伝えていくというのは安心感がある。
ネットの情報は、Xで気象庁などの公式や、民間の地震速報系アカウントが情報を発信している。ただこうした情報は、ある意味公式情報がでない限り更新されない。つまり情報が出てこない間は、沈黙している。これはそのアカウントが活動しているのかが分からず、当事者にとってのライブ性は低い。
スマホの放送サービスである「NHKプラス」は、通常であればログインしないと画面上に大きくWebサイトから登録手続きを促すメッセージが出て、ライブ映像の1/4程度が見られないようになっている。だが緊急放送時には、ログインしなくてもメッセージなしで番組が確認できた。この措置には納得感がある。
津波が到達したとみられる時刻からおよそ20分後、家族のスマートフォンが一斉になり出した。余震がくるのかと緊張しながら確認したところ、Yahoo!が運営する「防災速報」からの津波警報であった。なんと津波到達からかなり遅れて、警報が警報が鳴り出したのである。
アプリを確認すると、一部通知の未配信という通知が出ていた。インターネットの基本はベストエフェートなので、こうした遅延はやむを得ないわけだが、緊急情報においてその即時性は、完全には機能しない可能性があるという事である。このネット中心の時代、テレビなどの放送は何かと批判の対象となるわけだが、こうした緊急対応の即時性においては、放送の強みが発揮されたといえる。
ラジオ放送も、FM局のみであるが確認した。AMラジオは多くの地域で休止が決定しており、今後はあてにできない。NHK FMは臨時放送に切り替わっており、情報を繰り返している。車で移動中の人も、カーラジオがない車というのはあまりないと思われるので、情報から遮断されると言うことはなかっただろう。
一方で常日頃からラジオは緊急時に役に立つとコマーシャルを流していたローカル民放FMは、全国放送を通常通り放送していた。夜9時過ぎゆえに、緊急放送できるスタッフがいないということかもしれない。
NHKをひいきするわけではないが、テレビもラジオもいつでも緊急放送対応できる技術スタッフやアナウンサーを24時間体制で準備しているというのは、もはやNHKしかできないことになりつつある。ネット受信料などで25年はかなり批判されるものと思われるが、地方の隅々まで緊急報道対応が可能という点において、少し加点してもいいのではないだろうか。
防災無線は、筆者の住む地域では機能しなかった。このあたりの防災無線はずいぶん昔に整備されたものなのだろうが、近年都市計画区域に指定されたことから、急速に発展している地域である。昔は一面の田畑で人家もまばらだったが、現在は背の高いマンションや商業施設が建っている。防災無線のスピーカーの配置場所は、現在の建屋の状況を勘案して、再考しなければならないのだろうが、完全に後手に回っている。
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