実は攻めていたパナソニック「VIERA」 事業売却検討まで落ち込んだ“日本特有の事情”とは:小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)
2月4日のパナソニックHD決算説明会で「パナソニック株式会社」を解散し、事業再編すると発表された。この「パナソニック解散」という字面の強さが一人歩きしてしまい、一時大騒ぎになってしまったようだ。もう一つ、経営改革の目玉として注目されたのは、これまで「聖域」として守られてきたテレビ事業にもメスを入れることに言及したところだ。
「テレビ」でなければ?
日本の家電メーカーの多くがテレビを手掛けていたのは、一家に一台三種の神器と言われた時代から、それだけ需要がある家電だったからだ。核家族化して世帯数が増えたことで、さらにテレビも売れた。21世紀に入ってからはアナログからデジタルへの転換、薄型化、HDから4K、ネットサービス化といった技術的イノベーションが立て続けに起こり、走り続けることができた。
だがそれは日本だけに起こったことではなく、世界中で起こった。日本のテレビが品質で負けたとは思わないが、価格競争で中国メーカーに負けた。現パナソニック株式会社の中に「中国北東アジア社」があることからも想像できるように、パナソニック全体にとって中国市場は収益の柱である。その中国市場に食い込めないテレビは、キツいというわけだ。
とはいえ、情報社会まっただ中の現在、ディスプレイは至る所に使い道がある。PC用ディスプレイは大型化が進み、湾曲タイプも広く受け入れられている。またモバイル用として小型拡張ディスプレイも好調だ。デジタルサイネージもまだまだ伸びしろが大きい。チューナーレステレビも登場するたびに、大きな話題になる。にもかかわらず、こうした分野も中国メーカーに取られた。
日本企業のテレビ産業は、テレビ局との蜜月関係があるかぎり、聖域でいられた。番組をスポンサーし、テレビCMでテレビを売っていくという、メディア産業と構造が一体化していたために、あまりにも特殊すぎたのだ。
多くの人がパナソニックという企業に持っているイメージは、丈夫・壊れない・安心といったところだろう。「ナショナルって言う聞いたことないメーカーの製品があった」という話がときおりネットでバズるように、現役で動き続ける製品も多い。ナショナルブランドがなくなったのが08年だったので、少なくともそれ以前の製品という事である。
テレビ事業も、チューナーがないディスプレイならVIERAブランドがほしい人は多いのではないだろうか。最先端を追わなくとも、ネットコンテンツを見たり、PCをつないだりといったデカい汎用モニターとして、10年以上壊れない製品なら、高くてもVIERAを選ぶ。業務用ならなおさら中国メーカーは選べない。壊れた場合の責任の所在と処理が面倒だからだ。
「テレビ」という冠を外してしまえば、ディスプレイはやれることが多いはずだ。近未来のスマートライフは、「テレビはもういいよ」という前提の先にあるとは考えられないだろうか。
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