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「DaVinci Resolve」とソニーの映像制作クラウドが連携可能に 使い勝手をチェックしてみた小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/2 ページ)

Ci Media Cloudは、ソニー製のカメラからのオンラインアップロードに対応するのが最大の特徴だ。これがDaVinci Resolveとワークフロー連携できることになった。この拡張機能を使う事で何ができるのか、試してみた。

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アノテーション機能もあるが……

 アノテーション機能とは、クリップの特定箇所に対してコメントを付けることで、編集指示を行うものだ。このコメントは、編集者以外の人達はCiのWebアプリ上で入力したり、あるいはスマホアプリ上で入力できる。


Ciのスマホアプリでプレビュー、コメント入力ができる

 入力したコメントは、Electronアプリ側にも同期するので、編集者はそこからコメントを確認できる。クリップ上でポイントを指定された場合は、そのクリップを「全ての項目はResolveにエクスポート」することで、DaVinci Resolve Studio上のクリップにも反映される。


コメントの位置もエクスポートすることで同期できる

 一方DaVinci Resolve Studio上で編集者がコメントを入力した場合は、逆にElectronアプリで「すべての項目をCiにインポート」すると、コメントがCi内のクリップに反映される。

 本来であれば、こうしたコメントのやりとりが発生した場合には、いちいち同期処理をElectronアプリ側から手動で行うのではなく、自動同期であるべきだ。そうしないと、コメントの追加や変更に気が付かないまま作業が進んでしまう恐れがある。このあたりが、別アプリになっている弱点といえる。

 他のツールでは、画面上にマーカーやペイントで直接指示を書き込むといった機能をサポートしているものもある。だが今回の拡張機能では、そこまではサポートしていない。

 これに代わる方法として、例えばスマホのカメラ機能を使って、画面上を指さしているところ写真に撮ってそれをCiに送るという方法が提案されている。まあそれも1つの方法ではあるとは思うが、あまりスマートとはいえない。


画面上に書き込めないなら指さしている写真を撮れ、というのはスマートではない

 画面に書き込んで指示を出したいという場合は、Dropbox Replayか、AdobeのFrame.ioを使うべきだろう。またBlackMagic Cloudではリアルタイムのテキストチャットやビデオ会議もサポートするという強みがある。

 興味深い機能としては、DaVinci ResolveとElectronアプリのプレビュー画面で再生位置を同期する機能がある。同期ボタンをONにしておくと、DaVinci Resolveの再生ポイントがリアルタイムに反映されるので、問題となっている箇所の特定などには役に立つだろう。


DaVinci Resolveの再生ヘッドと再生位置が同期する機能も搭載

 ただしこの機能を生かすには、なんらかの別ツールでリアルタイムなコミュニケーションが成立している必要がある。この拡張機能はあくまでもCiとDaVinci Resolveの間をつなぐものという、最低限の機能を提供するものと考えた方がいいだろう。

 タイムラインのレンダリング結果をCiに出力するには、ソニーから提供されたデモビデオではElectronアプリ側にレンダリングボタンがあるとされている。このレンダリング機能を使えば、タイムラインの編集結果をCi側にすぐ投稿できるようだ。だが筆者がインストールしたバージョンでは、このレンダリングボタンが表示されなかった。

 これは筆者がCi Media Cloudの無料版を使っているせいかなとも思う一方で、提供された拡張機能には有償・無償の区別はないので、単に現在の公開バージョンでは搭載されていないだけかもしれない。

 この拡張機能はまだ提供が始まったばかりで、今後のアップデートでさらに機能拡張されるものと思われる。おそらく数多いノンリニアツールに対してCiをインテグレートしてくれというのも無理があるので、外部連携ツールという格好で設計することで汎用性と開発効率を高めたという事かもしれない。

 ノンリニアツールを持たないソニーとしては、どれだけ多くの編集ツールとリンクできるかは重要だ。特に昨年Inter BEE 2024で発表された報道支援システム「Contents Production Accelerator」では、放送局内で使われている多様なノンリニアシステムをサポートする必要がある。

 Contents Production Accelerator日本国内の放送局向けに提供されるソリューションなので、ワールドワイドで提供されている今回の拡張機能がどれほど関係するのか分からないが、すくなくとも多くのノンリニアツールに対しての「足場」ができたというのは、意味がある。あとは日本で採用の多い「EDIUS」に対応するだけだ。

 コロナ禍が一段落…気にしなくなったというだけでウイルスがなくなったわけではないが、働き方も以前のように密室に数人が詰めて編集するみたいなワークフローに戻っているところも一部にはあるようだ。だが人待ちで作業が止まるより、平行でどんどん進めて、ポイントだけリモートで打ち合わせというほうが、時間効率がいい。

 こうしたワークフローのためには、クラウドとアノテーションツールは必須になる。現在はまだどちらも手探り状態だが、25年から26年あたりには方法論も固まってくるのではないだろうか。

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