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25年度も“新人VTuber約20人がデビュー”──「にじさんじ」運営の戦略 「ホロライブ」とは異なる方針 その狙いは?

2026年4月期(25年5月1日〜26年4月30日)も、約20人の新人VTuberをデビューさせる──VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLORは、25年4月期通期決算説明資料内でそのような方針を明かした。

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 2026年4月期(25年5月1日〜26年4月30日)も、約20人の新人VTuberをデビューさせる──VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLORは6月11日、25年4月期通期決算説明資料内でそのような方針を明かした。前期は計19人のVTuberがデビュー。26年度4月期も同様の方針を示したが、その狙いはなにか。

 決算説明資料によると、にじさんじと英語圏向けグループ「NIJISANJI EN」の合計で、計170人のVTuberが同社に在籍している。25年4月期中、同社は10〜15%程度の新人デビューを計画し、計19人の新人VTuberが誕生。また同期中には、計3回の新人発掘オーディション(VTAオーディション)を開催し、累計4.1万人の応募があったという。


にじさんじとNIJISANJI ENの所属VTuber数

 25年4月期中の取り組みの結果、同社は「近年にデビューしたVTuberの平均売上は高い傾向にあり、デビューから収益貢献までの時間軸は早期化傾向」と分析。デビュー年度別の収益貢献度は、19年4月期以前デビュー(VTuber数54人)は24%(約103億円)だったのに対し、23年4月期デビュー(同29人)は23%(約99億円)、24年4月期デビュー(同10人)は5%(約21億円)、25年4月期デビュー(同19人)は2%(約8.6億円)となった。


デビュー年度別の収益貢献度

 この結果を踏まえ、同社は26年4月期も同様に10〜15%程度の新人VTuberをデビューさせる方針を発表。「特色あるVTuberデビューを継続し、VTuberのジャンル/属性の面で多様性を促進し、新しいファン層を開拓」と説明した。


ANYCOLORの新人VTuberのデビュー方針

人気VTuberへの収益依存に対策

 また同社の新人デビュー方針は、人気VTuberへの収益依存のリスクヘッジも兼ねていると考えられる。同社はこのリスクについて「当社事業の特徴として逃れられない点ではあるものの、実際は当社の売上は多くのVTuberに分散しており、特定VTuberへの依存によるリスクが顕在化する可能性は高くない認識」と決算資料上で回答。多くの人気をVTuberをプロデュースしていくことで、収益の一極化を避けているようだ。

 また、人気VTuberの卒業や引退などによる業績への影響については「その他サポート体制の充実や、ライバーが望むような幅広い活動支援できる体制を充実させることで卒業などのリスクに対処」と説明している。


人気VTuberへの依存リスクに対する考え

 同社では会社基盤を強化するため、25年4月期中には100人超の人材を採用。正社員と契約社員の数は、計532人に及んだ。同社これにより、VTuber活動のプロデュース・サポート強化のためにはタレントマネジメントやプロデュース本部など、VTuberの活躍機会の最大化のためには社内のマーケティングチームなどに人員を割り振っているという。


ANYCOLORの従業員数の推移

会社基盤の強化方針

 同社の25年4月期通期決算は、売上高は428億7600万円(前年同期比34.0%増)、営業利益は162億7900万円(同31.7%増)、経常利益は162億1400万円(同31.4%増)、純利益は115億1000万円(同31.9%増)だった。


25年4月期通期決算サマリー

「ホロライブプロダクション」のカバーとは異なる方針に

 なお、バーチャルYouTuber事務所「ホロライブプロダクション」を運営するカバーの谷郷元昭社長は5月、決算説明会見で短期的な新人デビュー方針について「ちょっとコメントしづらい」と言及を避けた。谷郷社長は続けて、既存の人気タレントがより活躍できる環境を整えていく意向を示した上で、タレントの新規発掘も中長期的には必要と考えを示していた。


カバーの谷郷元昭社長(25年3月期通期決算説明会見で撮影)

 25年3月31日時点でのホロライブプロダクションの所属VTuber数は89人で、カバーの従業員数は679人。ANYCOLORと比べ、所属VTuber数はおよそ半数程度少なく、従業員数は100人超多い体制となっている。


カバーの従業員の推移

 カバーの25年3月期通期(24年4月1日〜25年3月31日)決算の結果は、売上高は434億100万円(前年同期比43.9%増)、営業利益は80億100万円(同44.5%増)、経常利益は79億6200万円(同41.6%増)、純利益は55億5900万円(同34.4%増)だった。


カバーの通期業績推移

 ANYCOLORとの収益の差については、販管費の違いが大きい。ANYCOLORの25年4月期通期の販管費は38億2900万円だったのに対して、カバーの25年3月期通期の販管費は138億300万円と、約100億円の差がある。両社の内訳を比較すると、カバーでは倉庫販管費の項目があり、同期中では約37億円分を計上。またカバーの人件費はANYCOLORの2倍以上となっている他、全ての項目でANYCOLORを上回っている。

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