検索
連載

視野を2.5倍にするレンズは「あと一息」──ViXionに聞く大径化と“オートフォーカス眼鏡”実現への道筋知らないと損!?業界最前線(2/4 ページ)

プラモ好きや歯科医師など、手元で細かい作業をする人達の間で密かに注目を集めているのがViXionのオートフォーカスアイウェア。現在は視野が狭いのがネックだが、今後はレンズを大きくして、いずれオートフォーカスメガネへと進化するという。開発状況を聞いた。

Share
Tweet
LINE
Hatena

南部氏:研究段階ではありますが「Auto PD(pupillary distance:瞳孔間距離)」機能の開発も進めています。人の眼は、近い場所を見るときは寄り目になり、遠くを見るときは外側に瞳孔が動きます。しかし、レンズが小さいViXion01/01Sでは、ユーザーが都度、手で調節しなければなりません。


遠くを見たとき(写真=上)と手元を見た時(写真=下)の瞳孔間距離の違い。近い場所を見るときは寄り目になる

 Auto PD機能は、その時の焦点距離に応じて自動で瞳孔間距離を変えます。例えば顔を上げたタイミング(=遠くへ視線を移した時)で自動調節してくれるような形を想定しています。

 本当はレンズが大きくなればAuto PDは必要ありません。われわれの目指すところは「今のメガネと同じように使ってもらえる」ことなので、いずれは必要なくなる技術ではありますが、過渡期にはそういった工夫も必要ではないかと開発メンバーと話しているところです。

──Auto PDはすでに動いているのですか?

南部氏:動かす技術自体は完成していますが、製品に組み込んだ時の重量バランスや消費電力、コストの問題などを検証していかなければなりません。われわれの製品は、まだ手軽に買える価格帯ではないと認識していますし、Auto PDを追加すると、どうしてコストが上がってしまいます。

 まずは動くプロトタイプを作り、価格の上昇を上回る利便性を提供できるのか検証します。次のレンズ開発が完成した後、次世代モデルに組み込んでいければと考えています。

──それは、9mm径のレンズではまだAuto PD機能が必要という判断ですか?

南部氏:それもやってみなければ分からない状況です。今はプロトタイプの数が極めて限られていて、われわれもあまりテストができていません。今後、技術的検証を重ねていくことになるでしょう。

 ViXion01を購入された方からは「仕組み自体は良くできているから、レンズを大きくしてくれ」とよく言われます。待ち望まれていることは重々承知していますので、そこに全力投球していきます。

数年の内に“オートフォーカスメガネ業界”ができそう

──コア技術であるリキッドレンズ(※)を作っている企業とはどのような関係なのでしょう

※リキッドレンズ(液体レンズ)は、電子的に液体材料の厚みや形状を変え、光屈折率を変化させて焦点距離を調節する光学デバイス。現在の用途はカメラやコードリーダーなど産業用途が中心

南部氏:レンズのメーカーはもともとフランスの会社で、今は米国企業に買収されたと聞いています。以前から特殊なレンズを作っていて、既存のレンズをわれわれが流用して製品を作ってきた経緯があります。われわれはHOYAが出身母体で、レンズメーカーと資本関係はありません。

──レンズメーカーもメガネの代替を目指しているのでしょうか

南部氏:いえ、彼らは工業製品に組み込む用途で開発していて、このレンズをメガネに使う想定は全くしていなかったようです。われわれがコンタクトを取ったときには驚かれました。

 弊社の内海(取締役開発部長の内海俊晴さん)がこのレンズのことを知っていて、試しに試作機を作ってみたらちゃんと動いたんです。そこでメーカーに「弱視の方に向けた製品を作りたい」と相談にいったところ、非常に喜んでくれて。「われわれは考えたことはなかったけれど、非常に可能性を感じる。ぜひ協力したい」と言ってもらえました。レンズの大径化についても密に協力しています。


初期のプロトタイプを披露する同社取締役開発部長の内海俊晴さん(発表会で撮影)

──リキッドレンズを使ってメガネの代替を目指している企業は他にもいくつかあると聞いています。ViXionは製品化においてリードしている、という認識で合っていますか?

南部氏:リードというと、ちょっと気恥ずかしさはありますね。というのも、他社さんはもっとレンズを大きくしてから製品化しようと考えているか、あるいはメガネのメーカーというよりレンズシステムのサプライヤーを目指しているのではないかとみています。ですから、われわれが先行しているという意識は正直ありません。

 われわれの場合は「まだ課題のある製品だけれど、これでも困っている人たちの不便を少し解消できる可能性があるのなら、それはそれで出していこう」という考え方です。歯科医さんなど細かい作業をする人の中には「これを待っていたんだ」と言ってくれる人たちがいますので、その期待に応えていきます(歯科医師向けに特化した製品も計画中)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る