「生成AIで競馬予想」って勝てるの? AI予想歴20年のベテランに聞く最新の勝ち方と、宝塚記念の結果(1/4 ページ)
生成AIの登場で変化したAI競馬予想の世界。最新状況を、AI競馬予想歴20年のベテラン「ヤナシ社長」に聞く。
競馬予想の世界に、新風が吹き荒れている。主役は、今話題の生成AIだ。ChatGPTやClaude、GeminiといったAIが、ついに競馬予想の世界にまで進出している。従来の予想スタイルから、データに基づいた“生成AI競馬予想”へとシフトするファンもじわじわと増えている。
「生成AIで競馬予想なんてできるの?」と思った方もいるかもしれない。しかし、競馬のレースの裏側には、馬の血統、騎手の実績、過去のレース展開、馬場(レース場の)状態など、途方もない量のデータが隠されている。従来の予想では、競馬新聞記者の直感やベテランファンの経験則に頼りがちだった要素でも、生成AIならより手軽に“勝利の兆し”を数値として見つけ出せるという。
今回は、そんなAI競馬予想の最新状況について、最前線で活躍するプロフェッショナルにインタビュー。相手は、慶應義塾大学大学院で統計解析を学び、20年以上にわたり競馬にAIを活用する他、競馬予想サイト「netkeiba」が主催した「AI競馬マスターズ2023」で3位入賞の実績を持つ「ヤナシ社長」だ。
同氏はAIを活用したマーケティング支援事業を手掛ける企業で社長を務める傍ら、AI競馬予想を楽しむ人物。本業でもデータ活用やAI関連のコンサルティングに携わり、23年ごろから生成AIを活用した競馬予想「生成系競馬予想」にも取り組んでいるという。ヤナシ社長から見た、AI競馬予想の最新トレンドとは。
AI競馬予想は「どんなデータを食わせるか」勝負になりつつある
AIを使った競馬予想は「過去の膨大なレースデータから『勝つ馬の特徴』を学習した機械学習モデルを開発し、そのモデルを用いて未来のレースの出走馬の勝率を算出する」といった手法が知られる。ただ、昨今はその“戦い方”に変化が生じているという。
競馬といえば競馬新聞や予想サイトに載っている、前レースの情報や記者の意見などを基に予想するイメージが強い。AIによる予測でもこれらの情報を使う……と思いきや「ああいったところの情報だけだと、情報量が少なくて勝てないのがAI競馬予想の面白いところ」「恐らく回収率は80%を切る」とヤナシ社長。
回収率100%を超すために必要なのは、付けている馬具や放牧先、調教のされ方など、一般的な競馬新聞に載っていない情報から、回収率向上につながる特徴量を集めること。ときには「初心者がどれだけ多いか」につながるデータとして、競馬場への来場者数などが参考になることもあるという。
「競馬のデータ分析をしたいと考える人は、分析手法にこだわる場合が多いが、アルゴリズムの方はあまり勝負に影響しない。LLM(大規模言語モデル)を使おうが、重回帰分析など古典的な手法だろうが、データセットが同じだったらマシンの性能差くらいしか出ない。勝敗は情報量、特徴量で決まる。『何を食わせるか勝負』になりつつある」(ヤナシ社長)
ただし“おいしいデータ”は、当然他の人も見つける可能性がある。広がれば予想に反映させる人も増え、同じ馬に期待が集中。結果払い戻しが少なくなり、回収率も下がる。つまり情報の陳腐化が起こるわけだ。この陳腐化の速度も、AI競馬予想に参入する人が増えているために加速しているという。
「株に加えて、競馬などギャンブルの領域で統計解析やAI活用をしたいという学生が増えている。2〜3年前は、株に比べて専門家が多くなかったが、最近になって“東大出身”をうたう人など、専門家が増えてきた印象がある」(ヤナシ社長)
データの重要性は、生成AIの登場によってさらに加速したとヤナシ社長。同氏は生成AIの登場を「データセットと分析手法のうち、分析手法における革命」と評する。
「これまでは、仮にデータをたくさん持っていても(モデルが作れず)参入できなかった。しかし今はChatGPTなどに解析させれば、理論的にはこれまでAIで競馬予想をしてきた人たちとほとんど同じことができる。解析するハードルが生成AIですごく下がった」(ヤナシ社長)
生成AIを本格的に競馬予想に活用している人はまだ多くないものの、分析用モデルの自作に生成AIのコーディング支援を役立てる人は増えているとヤナシ社長。では、ヤナシ社長自身はどんなデータに目を付け、生成AIをどんな方法で競馬予想に役立てているのか──次ページからインタビュー形式で紹介する。
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