算数の男女格差はいつ生まれる? フランスチームが2019年に研究 250万人以上の小学生で大規模調査:ちょっと昔のInnovative Tech
フランスのUniversity Paris Citeなどに所属する研究者らは2019年、算数・数学(以下、算数)の男女格差がどこで生まれるのかを調査した研究報告を発表した。
ちょっと昔のInnovative Tech:
このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。
X: @shiropen2
フランスのUniversity Paris Citeなどに所属する研究者らが2019年に発表した論文「Rapid emergence of a maths gender gap in first grade」は、算数・数学(以下、算数)の男女格差がどこで生まれるのかを調査した研究報告だ。
この研究では、フランスの小学1年生と2年生(265万3082人)を対象にした4年間の言語と算数のパフォーマンスにおける縦断的評価を実施した。
結果、男女ともに入学時は同様の算数スコアを示したが、就学4カ月後には男の子に有利な男女格差が有意になり、1年後にはその差が顕著になった。
なぜ女子は算数で後れを取るのか。研究者たちは複数の要因を指摘している。教師や保護者が無意識のうちに「男子は算数が得意」というステレオタイプを伝えること、男子の成功は才能によるもので女子は努力によるものだという偏見が女子の自信を損なうこと、学校で「算数」という科目が明確に区別されることで女子が自らにステレオタイプを当てはめてしまうことなどが挙げられる。
また、女子は男子よりも算数に対する不安を抱きやすく、時間制限のあるテストでの成績に影響する可能性もある。
改善策として、算数への不安を軽減する支援の提供、授業中に男子と同じ頻度で女子の参加を促すこと、教室外での好奇心と問題解決能力の育成などを提案している。さらに、算数の得意さの定義を広げる必要性を指摘。素早く答えることだけでなく、解法を見つけることも能力の指標として認められるべきだという。
Source and Image Credits: Payne, C. Reading and the math gender gap. Nat Hum Behav 3, 1038(2019). https://doi.org/10.1038/s41562-019-0753-9
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
母体の“鉄不足”は赤ちゃんの性別にどう影響する? 阪大がマウス実験 「男→女」への性転換を確認
大阪大学大学院生命機能研究科の研究グループは、ほ乳類における妊娠中の母親の鉄不足が赤ちゃん(胎児)の性別決定に影響を与える可能性を明らかにした研究報告を発表した。
“理系に行けプレッシャー”を男は多く受けている? 性別による進路選択の違い 慶大研究者が検証
実は進路を“自由に選んでいる”のは女子の方だ──慶應義塾大学大学院に所属する國武悠人さんは性別を理由にした“進路干渉圧”について、そんな指摘をしている。
「牛角の女性半額キャンペーン」とはなんだったのか ジェンダー割引という“男性差別”を慶大研究者が考察
慶應義塾大学に所属する國武悠人さんは、大規模な批判を受けた牛角の女性限定半額キャンペーンの事例を通じて、日本における性別に基づく価格設定、特に女性限定割引について、企業が直面するリスクと消費者意識の変化を分析した探索的研究を発表した。
若い頃のいじめ被害→長年にわたって脳構造が変化 2000人以上を調査 男女で異なる変化も
アイルランド王立外科医学院などに所属する研究者らは、慢性的ないじめ被害が青年期から成人初期にかけての脳発達に及ぼす影響を調査した研究報告を発表した。
水族館で新種の甲殻類発見 その名は“ランマアプセウデス” 特徴は雌雄(男女)同体→「らんま1/2」から命名 高橋留美子さんも公認
北海道大学大学院理学院修士課程の松島吉伸さんと同大学大学院理学研究院の角井敬知講師の研究チームは、水族館の水槽から新種の甲殻類を発見した研究報告を発表した。

