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銀塩カメラ的“縛り“もオジさん達に大ウケの富士フイルム「X half」 きっかけは入社2年目の若いデザイナーだった分かりにくいけれど面白いモノたち(5/7 ページ)

まず思ったのは「デジタルカメラでハーフサイズってどういうこと?」だった。富士フイルムの「X half」である。この興味深いけれども、どこか不思議なカメラについて、開発担当者に詳しい話を聞いてきた。

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 かつて、フィルムカメラの時代には、当たり前に、入れるフィルムを考えるところから撮影が始まっていたことを思い出した。今回は、作品展に応募する写真を撮りたいから高感度の白黒フィルムにしようとか、新婚旅行でバリ島に行くから、発色が鮮やかで高精細なポジフィルムを使おうとか、そういうことを当たり前に考えていたことを、すっかり忘れていた自分に驚いたりもした。


フィルムカメラモードで撮った写真は、スマホに取り込む際に、まずネガっぽい画面として取り込まれ、徐々にポジカラーになるというギミックが用意されている。これは、画像データを取り込む待ち時間をも楽しんでもらいたいという工夫

 1枚ずつ、撮るたびにフィルムを選ぶなら、それはフィルターやエフェクトと変わらない。ところが、36枚、48枚、72枚を撮り終わるまでずっと、そのフィルムに付き合うという体験は「フィルムを選んでいる」という実感が生まれる。その忘れていた感覚が妙に新鮮だったし、確かに「フィルムカメラモード」という名前がぴったりだと感じた。しかも、撮ってみると、確かに「おお! これはVelvia(ベルビア)のあの色と質感だ!」と思える見事な再現度。


フィルムシミュレーションを「Velvia」に設定して撮った写真の例。このネットリしつつビビッドな色は、まさにVelviaという気がする

「フィルムシミュレーション自体は、従来からXシリーズなどに搭載しているものと同じです。ただ、フィルムらしい質感は取り入れたかったので、『グレイン・エフェクト』機能を少し強めにして搭載しています。若い人が『写ルンです』を使ったり、古いデジカメを使うみたいな、荒いザラッとした質感を意識しましたね。今のユーザーが考えるフィルムらしさのような」

 グレイン・エフェクトは、確かに、かなり強めに掛かる。強度を「強」にして、粒を「大」にすると、かなりの粒感が出て、高校生の頃、「Tri-X」(KODAKの白黒フィルム)を800や1600に増感してアンダー目に撮っていた頃を思い出したりもした。

 当たり前のようにキレイに撮れてしまうスマホのカメラに慣れていると、この見ようによって失敗と思われるような質感が、「絵」としての面白さに見えてくる。もはや写真は「真を写す」よりも、味や深みのある「絵」が撮れる方が、わざわざカメラを買うという行為にとっては正解という時代になっているのかもしれない。元々、写真は「嘘」を写すから面白いと思っている私には、X halfのようなカメラこそ、正しい写真機に見える。


こちらは、フィルムシミュレーションでモノクロフィルム「ACROS」を選んで、グレイン・エフェクトを強めに掛ける設定で撮った写真。70年代のモノクロ写真っぽい感じが出て面白い

 最初のモックアップと見比べると、サイズや全体の印象、ダイヤルやレバーなどの操作系の配置などはほとんど変わらないのだけど、細部には違いがある。例えば、製品には搭載された光学ファインダーがモックアップにはない。また、ムービー用のライトと、スチル用のフラッシュは別になっている。

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