画像生成AI活用で賛否、ゲーム「神魔狩りのツクヨミ」は“成功”したのか──金子一馬氏&開発Pに手応えを聞いた(3/3 ページ)
「実は、(開発を始めた)最初の方はAIの利用に反対する世間の動きもあり、結構ビクビクしていました」──生成AIを取り入れたコロプラのゲーム「神魔狩りのツクヨミ」(じんまがりのつくよみ)について、同作を手掛けるゲームクリエイターでイラストレーターの金子一馬さんと、開発プロデューサーの齋藤ケビン雄輔さんはこう語る。
「生成AIで何でもやらない方がいい」 得られた気付き
──神魔狩りのツクヨミを開発・運用で工夫した点は
齋藤:実は「Brilliantcrypto」というブロックチェーンを活用したゲームでも生成AIを部分的に取り入れており、多少知見がある状態でした。AIを呼び出す頻度や、生成をリアルタイムでやるのか、事前にやるのかでコストや体験がかなり変わることが分かっていたので、どこを同期的にしてどこを非同期的にするかはかなり考えました。
──例えば創成札のイラストは、プレイヤー視点だと“ガチャ演出”のようなものの最中に、リアルタイムで生成しているように見えますが
齋藤:必要な情報がそろうのは、創成札を作るときではなく、それ以前の敵を倒したタイミングなので、実は演出に先行して生成を始めています。ユーザーに生成を待ってもらうのは、演出としていい部分もあるんですが、長時間待たされるのはゲーム体験としては良くないので。
一方で、AIが生成するイラストのクオリティーと高速化との案配について議論と検証を重ねました。基本的により良いものを出そうとすればするほど1枚を作るのにかかる時間やコストが増えていくので、せめぎ合いがありました。
──試したもののボツになったアイデアはありますか
齋藤:敵のせりふをAIで都度生成し、ランダムな会話ができるようにすることも考えたのですが「これは面白いのか……?」となり……。何回も繰り返すとどうしても世界観から外れたせりふが出てくるなど、粗も出だしたので、人の手でやることになりました。
金子:生成AIでできることは全て試してみたくて、神魔の名前や性格をAIで設定するなど、想像できる範囲のことはやってみました。ただ、実際にやってみると意外と面白くないことが多いんですよね。
齋藤:神魔狩りのツクヨミに限らず、AIを使ったゲームを検証する中で多かった話なんですが「数回遊ぶ分には面白いかもしれないが、何時間も遊ぶときにリプレイ性が担保できるのか?」は課題になりがちでした。
生成AI(のゲームにおける利点)はランダム性だと思っているんですが、収束させればさせるほどAIである必要性がなくなっていくんですよね。
金子:みんな「AIだったら何でもできそう」と思っているんですが、逆にAIで何でもやらない方がいいというか。例えばAIを使って、NPCが自我のようなものを持っているオープンワールドゲームも作れるとは思うんですが、それは実生活とあまり変わらなくて、むしろ辛くならないかと(笑)
──開発当時と現在で、生成AIの性能も大きく変わっていると思いますが、気になるサービスや、試してみたい使い方は
齋藤:画像生成AIについていえば、精度が大きく上がっていると思います。今までだと難しかった、文字を含む画像の生成もできるようになりつつあるので、イラストだけでなくUIにAIが使えないか考えています。
あとはイラストのアニメ化や動画化ですね。やはりゲームの体験としても動きは重要なので、どれだけAIを取り入れられそうかは注目しています。
金子:Veo 3(Googleの動画生成AI)とかすごいですよね。「神様を描いてみました」みたいな人もいるし、それでもうけようとしている人もたくさんいるし。ぶっちゃけ競合ですよね。向こうの方がすごいこともあるし、頑張らないとなと。
──最後に今後のアップデートについて、差し支えない範囲で教えてください
齋藤:今月末にプレイヤーキャラクターとして「満月」「半月」を追加する他、オオカミが作るカードが持つ効果のバリエーションも増やす予定です。
──ありがとうございました
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