明日使える“論文の雑学” ちょっと変わった論文たち 「本文0文字」「ネコが書いた」「著者が5000人超」など(3/4 ページ)
米GoogleのAIチャットbotの最新版である「Gemini 2.5」についてまとめたプレプリントの著者が3295人と多いことが話題となった。この他にも、論文の各所が面白い面白い事例はたくさんある。この記事では、ちょっと変わった論文について紹介する。
本文が1文字もない論文
論文は何かしらの研究内容を公表する文章であり「これまでの研究では分からないことや問題点」「実際に行った研究内容」「結果の考察や結論、今後の課題」などを述べるため、何ページにもなってしまうイメージがあるかと思います。しかし、中にはかなり短いものもあります。
例えば1952年にジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックが書き、後にノーベル生理学医学賞の受賞対象となったDNAの二重らせん構造の解明に関する論文は、たったの2ページしかないことで知られています。
数学や、物理学の中でも数学よりの論文では、かなり短い論文があり、例えば本文が2文しかないものや、2単語と図が2つしかないものなど、極端に短い論文も時々存在します。
しかし、世の中には本文が0文字という、これ以上短くしようがない論文が、しかも(追試を除いても)2つもあります。そのうちの1つはロバート・フィエンゴとハワード・ラズニクによる「統語論における回復不可能な削除について」(On nonrecoverable deletion in syntax)という論文で、タイトル、著者、所属機関以外の本文は1文字も書かれていません。タイトルの通り、文を構成する単語を回復不可能なほど削除した結果、文字通り1字も残らなかった、という建付けの“論文”です。
もう1つはデニス・アッパーの「『書く事ができない』という症例に対する自己治療の失敗」(The unsuccessful self-treatment of a case of “writer's block”)という論文です。
やはり論文は0文字ですが、タイトルの通り、書く事ができない症状を自ら直そうと試みたものの失敗した、という内容です。それは本文が0文字になると言うものです。この論文の査読でも、「レモン汁とX線で慎重に調査したものの、欠陥が1つも見つからなかったため、そのまま掲載することを進める」というウイットに富んだコメントが付いています。
アッパーの論文は、行動心理学の分野ではかなり有名で引用回数は100を越えています。また、同じく自己治療に失敗したため本文が0文字に終わる論文や、部分的に治療に成功したので書きかけの本文がある論文など、いろいろな追試結果が論文化されています。
参考文献
Robert Fiengo & Howard Lasnik. “On nonrecoverable deletion in syntax”. Linguistic Inquiry, 1972; 3(4)528.
Dennis Upper. “The unsuccessful self-treatment of a case of “writer's block””. Journal of Applied Behavior Analysis, 1974; 7(3)497. DOI: 10.1901/jaba.1974.7-497a
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