中国の“BL事情”、中国人腐女子や出版関係者に聞いてみた 表現規制で独自に進化する花園、その一端(2/2 ページ)
中国BLの最新事情について、中国人腐女子や中国出版関係者、日本のマーケティングに取材。表現規制によって独自に進化した“花園”の一端を探る。
“海外輸出”にも期待? ビジネスとしての中国BL
この表現規制によって生まれた「全年齢向けにしなくてはいけない」という縛りは、日本のBLにはないビジネスチャンスにもつながるとAさん。特に中国BLの中でも、性的な要素が少ないものは、日本におけるマンガやアニメのように一般的な消費財とタイアップしやすい利点があると話す。
キャラクターグッズ市場のさらなる拡大も見込む。中国にも日本のキャラクターコンテンツのグッズは多く流通しているが、海外の版元から許可を得て製品化する都合上、高額かつ使えるイラストのバリエーションも少なくなりやすく、消費者にも飽きがきているという。中国のコンテンツを中国国内で生産・展開できれば価格も安くできるため、シェアを広げられる余地があると期待を語る。
海外展開にも積極的だ。日本での展開に加え、BLドラマが有名なタイでの実写化なども進んでおり、良質なIPが増えればさらなる“輸出”の可能性が広がるとAさんは期待する。
現地での制作となれば、中国当局の規制から外れた作品作りも可能になるため、制作側も海外展開に積極的という。中国国内のファンは、規制のない海外版やその二次創作をVPN経由で見に行こうとするため、消費者側の期待度も高いという。
一方でC社は、中国BLが日本のBLに比べ世界的に展開しやすいのは事実としつつ、人気が一部作者の作品に集中していると指摘。すでに輸出されているものと同じくらい人気の作品が今後も出てくるかは、規制の影響もあって不透明と話す。
規制と人気のはざまで、“花園”はどこへ
日本ですらクレジットカード会社を通した表現規制が話題になっている昨今、中国当局によるさらなる締め付けの懸念は否定できない。
AさんはBLに対する中国当局の規制について「当局は、BL含めサブカルチャーの存在自体は認めている。サブカルチャーが(男女の恋愛など)主流な文化にまで達さない限りはあまり干渉しないのが基本的な姿勢」とみている。
ただ、中国のBLが人気を博しすぎた結果として、当局の規制が強まるリスクも見込んでおり、BLの発展や市場拡大に向けては「提供側と当局の間で何らかのルール作りも必要ではないか」との考えを示している。
一方C社によれば、中国の作り手が海外に拠点を設け、国外で作品作りやマネタイズを進める例も散見されているという。同様の動きが広がれば、中国BLの作品作りに影響が及ぶ可能性もある。
規制とビジネスチャンスのはざまをたゆたう中国BLの今後。この文化は今後、より多くの人を魅了する花園になるだろうか。
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