アニメ制作会社を襲う“利益なき繁忙”──倒産・廃業は3年連続で増加 TDB調査
帝国データバンクは11月5日、2025年1〜9月に倒産・休廃業・解散したアニメ制作会社が計8件に上ったと発表した。年間では過去最多だった18年(16件)と同水準で推移しており、3年連続での増加が見込まれるという。
帝国データバンクは11月5日、2025年1〜9月に倒産・休廃業・解散したアニメ制作会社が計8件に上ったと発表した。年間では過去最多だった18年(16件)と同水準で推移しており、3年連続での増加が見込まれるという。
件数の内訳は、負債1000万円以上の法的整理による倒産が2件、休廃業・解散が6件。同社は、小規模な受託制作会社やフリーランスのアニメーターなどを含めると、実際にはさらに多くの事業者が市場から退出したとみている。
中でも、下請けとなる二次受託だけでなく、制作を直接受託する「元請・グロス請」と呼ばれる企業の倒産・廃業が目立った。過去5年間に市場から退出した制作会社も、約半数は元請・グロス請だったという。7月に破産したエカチエピルカ(札幌市)や、24年6月に破産した5(ファイブ、東京都中野区)の他、『ささやくように恋を唄う』などの放映延期で話題となり、24年12月に破産したクラウドハーツ(東京都杉並区)などが該当する。
アニメ制作業界はコロナ禍で受注減に見舞われたが、現在では海外需要の拡大を背景に、市場は過去最高の規模へと成長していると帝国データバンク。一方で、現場では制作コストや人件費の上昇を価格に転嫁できず、“利益なき繁忙”の状態に陥っているとも指摘する。受注の急増に供給能力が追い付かず、補填するために発注した海外への制作外注費が円安で高騰したことも重なったことで、収益が悪化したケースも見られるという。
元請制作を担う企業の約6割は、2024年度に業績が悪化。制作費の上昇に対しては、製作委員会に出資する企業などから値上げに応じる動きも出ているものの、IP収入など安定した収益基盤を持たない中小制作会社ほどヒット作の恩恵を受けづらく、収益力が低く資金面で不安定なケースが多いという。
25年秋には、放映が予定されていたアニメの延期が相次ぎ発生した。これにより、「業界全体でアニメーターなどのマンパワー不足も顕在化しつつある」という。帝国データバンクは「アニメ制作産業の持続的な成長に向けた適正な取引環境の構築や、アニメーターなどの人材育成といった支援策が急務だ」とコメントしている。
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