「海賊版サイトへのCDN提供継続」で約5億円の損害賠償命令、クラウドフレアに出版4社勝訴(1/2 ページ)
海賊版漫画サイトにCDNサービスを提供し続けたことが出版権の侵害にあたるとして、集英社、小学館、講談社、KADOKAWAの4社が米Cloudflareを訴えていた裁判で、東京地方裁判所は11月19日、Cloudflareに対し計約5億円の支払いを命じる判決を言い渡した。
海賊海賊版漫画サイトにCDN(コンテンツ・デリバリー・ネットワーク)サービスを提供し続けたことが出版権の侵害にあたるとして、集英社、小学館、講談社、KADOKAWAの4社が米Cloudflareを訴えていた裁判で、東京地方裁判所は11月19日、Cloudflareに対し計約5億円の支払いを命じる判決を言い渡した。
講談社、集英社、小学館に対しては、それぞれ1億2650万円と遅延損害金を、KADOKAWAには1億2140万円余りを支払うよう命じた。Cloudflare側は「故意または重過失がないこと」「出版権侵害への寄与が限定的であること」などを理由に、損害額の減額を求めていたが、裁判所は「被告の責任を減じるべき事情は見当たらない」と判断。CDNの提供を停止しなかったことに、明確な責任があると認定した。
対象となったのは、2021年頃から「3大海賊版サイト」にも数えられ、ピーク時には合計で月間3億アクセスを集めていた2つの海賊版漫画サイト。いずれもCloudflare社からCDNの提供を受け、約4000作品・12万話以上の漫画を無断で配信していた。
CDNは、契約先Webサイトのデータを世界各地のサーバに一時的に複製(キャッシュ)し、当該サイトへの負荷を分散させることで高速配信を可能にするサービス。原告4社は「CDNサービス一般を問題とするものではない」としながらも、CloudflareのCDNは本人確認が不十分なままでも契約可能な設計となっており、海外で身元を秘匿したまま巨大海賊版サイトを運営する基盤になっていたと主張した。
4社は20年から順次、Cloudflareに対して権利侵害の通知を実施。海賊版サイト運営者との契約解除を求めてきたものの、対応が得られなかったとして、22年2月に提訴に踏み切った。当初は損害賠償に加え、海賊版コンテンツの送信や複製の差し止めも求めていたが、該当サイトの閉鎖を受けて23年11月に取り下げた。
原告側は、各社が指定した特定の1作品について、サイト全体のアクセス数や閲覧話数、各社の対象作品の割合、正規配信の単価などをもとに損害額を算出。それぞれ1億4000万〜38億円超と評価し、一部請求として合計4億6000万円の賠償を求めていた。
東京地裁は、24年7月の弁論準備手続で「通知から1カ月以内に配信を停止しなかった点が出版権の侵害にあたる」との心証を開示。その後、損害額の審理に移っていた。
判決で東京地裁は、海賊版コンテンツとそのキャッシュデータが、Cloudflareのサーバによって日本の利用者に自動公衆送信され、出版権が侵害されたという客観的事実が認められると認定。Cloudflareによる当該サイトへのサービス停止は、出版権侵害を防止する上で必要かつ「技術的に可能」な措置だったと判断した。
判決を受け、4社は共同でコメントを発表。「権利者からの侵害通知を受けたにもかかわらず、適時・適切な対応を怠ったことが、著作権侵害の責任を問われる根拠となった」として、今回の判決がCDN事業者の責任を明確にした点を評価した。
また、「海賊版サイトの運営者が身元を隠し、海外からCDNサービスを利用して大規模配信を繰り返す現状において、重要な判断である」と強調。判決が「CDNサービスの悪用防止に向けた一歩となることを期待する」とし、「今後も作品の権利保護と正規コンテンツの拡充に努めていく」との姿勢を示した。
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