朝日新聞、「ウミガメくわえるタヌキ」の写真を取り消し AI加工が判明
朝日新聞社は11月26日、10月3日付夕刊記事に掲載した「ウミガメをくわえるタヌキ」の写真を取り消したと公表した。画像が生成AI(ChatGPT)で加工されたもので、事実と異なる部分があると判断した。
朝日新聞社は11月26日、10月3日付夕刊記事に掲載した「ウミガメをくわえるタヌキ」の写真を取り消したと公表した。画像が生成AI(ChatGPT)で加工されたもので、事実と異なる部分があると判断した。同日配信のデジタル版や、15日付の鹿児島版に掲載した同写真も取り消した。
写真は「タヌキがウミガメを口にくわえる姿」を写したもの。鹿児島県・屋久島のウミガメ保護団体から提供を受け、孵化したばかりの子ガメがタヌキに襲われる被害の実態を紹介した記事に掲載していた。
掲載後の調査で、画像は保護活動を紹介する資料を作る目的で、暗視カメラで撮影された動画から切り出したものを、ChatGPTに鮮明化を指示して出力されたものだったことが判明した。元画像と比較すると、タヌキの毛並みや体の輪郭が過度に鮮明になっている他、脚の位置や子ガメの向きも異なっている。
記事内容そのものに誤りはなかったものの、朝日新聞社は「画像に事実と異なる表現が含まれていた」として掲載を取り消した。「提供を受けた際の確認が不十分だった」とし、再発防止に努めるとしている。
同社の西山公隆・ゼネラルマネジャー兼東京本社編集局長は「事実と異なる部分がある写真を掲載したことをおわびします」とした上で、「今後は、加工や生成の有無の確認を徹底するなど、再発防止に努めます」としている。
この写真は10月20日に共同通信社も配信。日本経済新聞社など複数の加盟社が掲載したが、配信後、加盟社から「生成AIによる画像ではないか」との指摘があり、調査を経て11月1日付で取り消した。共同通信は、報道用の画像・映像などに生成AIを原則使用しないとの社内指針を掲げており、「事実を正確に伝えるべき報道写真として不適切だと判断した」という。
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