“書ける”のは同じ、では「高級筆記具」とは何か? 「KOKUYO WP」開発者に聞いた素材と技術、その目的の話:分かりにくいけれど面白いモノたち(2/4 ページ)
長い間、高級筆記具はコレクター向けか贈答品向けだった。しかし今はコクヨや三菱鉛筆などの一般筆記具を作っていたメーカーも高級筆記具を発売している。それでも今回の「KOKUYO WP Limited Edition」は、かなりの冒険に見えた。
コクヨが考える高級筆記具とは?
まず、コクヨが考える高級筆記具とはどういうものかについて尋ねたところ「『高級品を作る』ことが目的ではありません。良い素材を選び、丁寧な製法にこだわった結果として、それに見合った価格になっているということです」という返答だった。
「コクヨは今年(2025年)10月に『好奇心を人生に』という新しいコーポレートメッセージを掲げ、リブランドしました。が、ものづくりの根源にある『共感共創』というコクヨらしさを大切にする姿勢は変わりません。共感共創とは、お客様に共感しながらお客様と共に創るという姿勢です。高級ボールペンについても、価格ありきではなく、価値ありき。それがコクヨの考える高級ボールペンです」。
実際、今回の金属軸を使った「モスマーブル」、木軸の「イチイガシ」という2つの製品に触れたのだが、その素材といい、加工といい、十分価格に見合ったものだと思った。木軸の方は、愛知の老舗の家具メーカーにして様々な木材活用のスペシャリストでもあるカリモクとの共同開発。金属軸の方も、マーブル調のデザインアルマイトを採用。光の反射で色が変化を感じる仕上がりとなっている。どちらも、従来の高級筆記具でもあまり見られない仕上がりだ。
「KOKUYO WPというブランド自体が、“揺らぎ”や“変化”といった、均一でない美しさをテーマに開発しています。木軸については、言わずもがなの、個々の違いが出ていることと、使うことによる経年変化を感じることができることから、KOKUYO WPに込められた思いを体現する素材として選定しました。一方、金属軸は、本来は均一な仕上がりが求められる金属という素材に、あえて“揺らぎ”の表現を取り入れることで、新たな美の可能性を拡張するという挑戦を込めています。これは“書くことで発想を拡張する”というKOKUYO WPが大切にする思いとも重なります」。これが、今回、木軸と金属軸を採用した理由だそうだ。
つまり、重要だったのは「使いながら変化が楽しめること」「発想を拡張する手助けとなる筆記具にすること」という考えがあっての、高級素材と高い技術の活用。かつて、よく万年筆の限定バージョンが、希少素材を使ったり宝石を付けたりして、工芸品、美術品的な方向で価値を高めたのとは違う姿勢の製品ということだろう。
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