「Windows 95」発売から30年 パソコンが一番面白かった時代を振り返る:小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)
日本で「Windows 95」が発売されたのは、今をさかのぼる30年前の1995年11月22日深夜のことであった。米国ではすでに同年8月24日に発売されており、そのレビューなどがPC雑誌等で取り上げられていたことから、日本語版への期待は大きかった。ここでは、「Windows 95」発売から30年として、パソコンが一番面白かった時代を振り返る。
自作の衰退と秋葉原の変容
Windows XPの登場と直接的な関係があるのか、その因果関係は判然としないが、01〜02年頃からPC自作ブームには陰りが出始めたように思う。
実はこの頃から「DVD-Rブーム」が到来した。コンシューマー向け最初のドライブはパイオニアの「DVR-A03」だが、最初はドライブ単体の発売がなく、メーカー製デスクトップ機から搭載され始めたため、それをきっかけにメーカー製PCに流れた人が多かったのではないか。
加えてPCでのテレビ録画ブームが広がった。アナログ放送であれば自由に編集やコピーができたので、録画機能とDVD-Rドライブ搭載のメーカー製PCがよく売れた。ソニーのVAIOシリーズが録画機能を充実させたことや、デザイン性を向上させたり、黒物メーカーしか持ち得ないテレビやレコーダーのノウハウを投入した個性的なデスクトップ機を多く輩出したことも、自作ブーム終焉のきっかけとなったのかもしれない。
03年から地上波でデジタル放送が開始されると、DRMの関係から従来型のデスクトップマシンでは扱いづらくなっていく。ネックになったのは、ディスプレイが別、という構造だ。ディスプレイ端子を使ってキャプチャーされてしまうという懸念が広がったのである。代わってデジタルレコーダーの全盛期がやってくるわけだが、PCはモニター一体型マシンでその懸念を払拭し、ほぼテレビと一体化したような、独自の構造を展開していった。こうしたマシンは、自作やショップでは作れない。
加えて、メーカー製PCの価格が下がり、もはや自作の方が高いという逆転現象が起こるようになっていった。これはインターネットの普及により、PCの販売が店舗からネット注文からの工場直送へ移ったという事情もある。
こうした影響を受けて、04年頃の秋葉原では急速にPCショップの閉店が進んだ(参考記事)。代わって秋葉原の顔となっていったのが、アニメ・マンガ・メイド・アイドルといった「萌え文化」である。アダルトコンテンツもそれに加えてもいいかもしれない。もともとオタク気質な街であり、入手しづらいものが手に入るのが魅力の街ではあったのだが、主眼がハードウェアからソフトウェアへと移った、ともいえるだろう。
「AKB48」が最初の公演を行ったのが、05年の秋葉原である。今となってはAKBが何の略だったのか誰も気にしなくなったが、「アキバ」であることは間違いない。AKB劇場があるビルは現在「ドン・キホーテ秋葉原店」となっているが、もともとは「ミナミ電気館」である。それが「T-ZONE」になったり、ラオックス系の「アソビットシティ」になったりしたが、最終的にはドン・キホーテに落ち着いて現在に至る。
同じ05年には駅の東側が再開発され、「ヨドバシAkiba」がオープンした。駅の西側に展開する旧ショップ街との対立構造がうわさされたが、実際には人の流通は円滑で相乗効果もあり、街を二分するほどのことはなかったように思う。
06年の「Windows Vista」発売時には、ヨドバシAkibaにて深夜販売が実施された。だがすでにWindows 95やWindows 98の時のような熱狂はなく、当時の記事によれば購入者よりもむしろやじ馬やマスコミの方が多いといった状況であったようだ。すでにVistaの頃にはオンラインアップデートが一般的になっており、わざわざ物理パッケージを購入する必要性も薄かった。
正直Windows Vistaは、Windows Meと並んで印象の薄いバージョンである。約3年と寿命が短かったこともあるだろう。09年にリリースされた「Windows 7」は、安定性にも優れ、今でもベストと言う人は多い。
12年の「Windows 8」は、GUIが大幅に変更されたことで不評であり、その後の迷走につながった。タブレットの対応やクラウドサービスの対応、スマートOSを意識したデザインなど多くの革新性を持っていたが「なんでWindows 7じゃダメなんだよ」という声が多かった。
筆者もこの頃、あまりの使いづらさにWindowsの使用を諦め、執筆環境をMacへ移行した。それ以降は時々しか触っていないので、詳しいことは別の書き手へ譲りたい。
しかし考えてみれば、今の若い人はOSが有料パッケージで売ってた時代というのを知らないのだろう。その点では、Linuxの発展やMacOSの無償アップデート化などが、そうした時代へ引導を渡したといえるのかもしれない。
現在筆者は、古いマシンだが「Windows 11」をサブ機として使っている。久しぶりに触るWindowsは、8の混沌と絶望から比べれば随分と7の時代に戻ったようにも感じられる。結局OSに求められる機能とは、何かのサービスとの融合ではなく、シンプルに下回りを固めてくれるもので良かったのではないか。
26年は米GoogleがPC用OS「Aluminium OS」を準備しているといわれており、AIとOSの融合が果たされるようだ。だがWindowsの歴史が語るように、何かとの融合はいらんのじゃないか、という気もする。多分旧来のPCらしい使い方をしたい人には、余計なお世話になるのだろう。だが同じ市場で競争が生まれることは、悪いことではない。
Googleも秋葉原で発売イベントをやるのだろうか。Windowsのイベントには結局一度も参加していないので、やるなら行ってみたい気がする。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Windows 95」が発売20周年に 米国では「Start Me Up」24時間無料ダウンロード
Microsoftが「Windows 95」を発売して20年が経つ。米国ではこれを記念して、当時のテレビCMで使ったローリング・ストーンズの楽曲「Start Me Up」をWindows Storeで24時間限定で無料提供した。
懐かしの「Windows 95」を再現するWindows、macOS、Linuxアプリ、GitHubに登場(非公式)
Microsoftが1995年8月24日にリリースした「Windows 95」をWindows、macOS、Linuxで再現するアプリを、Slackのエンジニアが開発し、GitHubで公開した。Windows 10にインストールしてみたところ、稼働した。
さようなら、全てのインターネット・エクスプローラー
6月16日、Windows用のウェブブラウザーである「Internet Explorer」(IE)が、ついに最後の日を迎えた。幾度も延期されてきた「サポート終了」の日がやってきたのだ。
Windows 95の付録ゲーム「Hover」がWebに帰ってきた
Windows 95のCD-ROMに収録されていた3D“旗とりゲーム”の「Hover」が、WebGL採用でタッチ対応・マルチプレイヤー対応のWebゲームとして復活した。MicrosoftはIE 11でのプレイを推奨する。- 「PCはネットワーク接続できて当然」になったのはいつから?
PCをネットにつなげる試みは意外と早くスタートしていたが、日本ではほとんど知られていない。その理由は……。

