生放送にも“自動化”の波 AIカメラを使った「無人スタジオ」は人手不足を解消できるか:小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(2/2 ページ)
放送業界で進む人手不足を背景に、スタジオワークの省力化・自動化が加速している。Inter BEE 2025では、パナソニックが世界初のAF搭載スタジオカメラを発表し、キヤノンはAIで複数カメラを制御するソリューションを展示していた。どういったニーズに応えるものか、どういった収録が可能になるのかを解説する。
PTZカメラ自体の進化
キヤノンの新モデル
PTZカメラの新製品として、キヤノンは「CR-N400」と「CR-N350」を出展した。この2つは兄弟機で、出力端子等に違いがあるが、光学性能は同じである。
上位モデルの「N700」同様、4K/60pでの撮影が可能ながら、ボディ全体は小型化が進んでいる。光学ズーム倍率は20倍だが、HD解像度で使用する際にはセンサークロップによるアドバンストズームが併用でき、40倍ズームとなる。
従来は光学ズームとセンサーズームを併用する場合、光学ズームが行き着いてからセンサーズームに切り替わるため、途中で一瞬ズームが止まるなどの弊害が出ていた。N350とN400では、ズーム開始時に光学ズームとセンサーズームを同時にスタートさせることで、この途中切り替えをなくしている。
端子としては、N400はSDIやタイムコード、GENLOCK端子などを備えており、ベースバンドでの運用を想定。一方N350はHDMIとイーサ端子のみとなっており、コスパを上げてIPベースの運用にフィットするよう設計されている。
パナソニックの新モデル
パナソニックはPTZの新モデルとして、「AW-UE150」の後継機で4K対応となった「AW-UE150A」を展示した。ハイエンドシリーズには他に「AW-UE160」があったが、ともに新ファームで対応したのが、「Preset Smart Composition」という機能だ。
従来PTZカメラで2点間をプリセットして動作させると、移動途中で被写体が外れてしまい、移動途中の映像が使えないというケースがあった。これは、パン・チルト・ズームの動作が3つ同時にスタートして同着でゴールするために、極端にパン・チルト・ズーム値が違う2点間だと、途中のフレーミングが壊れてしまうからである。
一方でPreset Smart Compositionの場合は、極端に値の違う2点間でも、ターゲットとなる被写体を外さないような動作が可能になった。具体的には、パンとチルトというアングル値を、ズームよりも早くゴールさせることで、被写体を捉えた状態でズームしていくという、人間的な動作を再現した動きとなっている。
従来はプリセットに頼れないため、マニュアルコントロールで寄り引きしていたケースも多かったと思うが、ファームアップだけでカメラ側が勝手に判断するようになる。
またパナソニックで、およそ7年ぶりとなるカメラコントローラ「AW-RP200GJ」を出展した。同社初となるマクロ機能を搭載し、撮影アングルのプリセット以外に、ホワイトバランス調整などのカメラ調整もマクロに登録できる。
また左側に汎用のジョイスティックを搭載することで、カメラ2台の同時制御が可能になるほか、パラメータの変更もジョイスティックで可能になるなど、操作性を向上させている。
PTZカメラの周辺機器も充実
日本の三脚メーカーLibecでは、PTZカメラ専用の電動ペデスタル、「LX-ePed 2」シリーズを展開している。すでに以前から出ているものだが、標準モデルはグランドスプレッタタイプで、ドリーを付けたタイプを「LX-ePed 2 Studio」として展開している。
これはワイヤードのリモコンやフットペダルを使って、ヘッド部分を電動で昇降できるという機構を備えており、お話を伺った限りでは、こういうものはおそらく世界でこれだけだろうということだった。
昇降できる幅は40cmだが、スタジオワークでは十分だろう。昇降速度は14秒から40秒まで可変できる。耐荷重は10kgまで。
また最大耐荷重を30kgまで拡張した「LX-ePed PRO」も開発した。昇降幅は同じく40cmだが、同梱の大型プレートに付け替えられる。これにより、PTZカメラにプロンプターを搭載したり、複数台のPTZカメラを搭載するなど、マルチな運用が可能になっている。
PTZカメラは、場所を固定して使うものというイメージがあるが、スタジオカメラと同様、昇降雲台に載せることで、同様のカメラワークが可能になる。また撤収や移動の面でも転がしていけばいいので、取り回しはかなり楽になるだろう。
将来的には、スタジオ内にはキャスターしかおらず、副調室からすべて制御ということになるかもしれない。
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