未知なる存在「第5の力」とは何か? 星の冷え具合から探索する研究、国際研究チームが発表 過去最高精度の絞り込みに成功(1/2 ページ)
宇宙には4つの基本的な力「基本相互作用」が存在する。しかしこれらの他に、未知の力である「第5の力」が存在すると予言する理論がある。ドイツの研究機関は、これまでにない精度で、この第5の力の性質を絞り込むことに成功した。
宇宙には「強い相互作用(強い力)」「電磁相互作用(電磁気力)」「弱い相互作用 (弱い力)」「重力相互作用(重力)」の4つの基本的な力「基本相互作用」があります。しかしこれらの他に、未知の力である「第5の力(Fifth force)」が存在すると予言する理論があります。
第5の力は、一般相対性理論と量子力学を統合する理論や、重力相互作用が極端に弱いことを説明する理論で現れます。しかし、いまだに第5の力の存在を証明する観測結果はありません。
ドイツの研究機関「ドイツ電子シンクロトロン」のダミアーノ・F・G・フィオリッロ氏などの研究チームは、宇宙にある高密度の天体「中性子星」の温度を計測し、理論的に予測される温度とのズレから第5の力の性質の探索を行いました。結果として、第5の力の発見こそできなかったものの、天体を使った研究において、これまでにない精度で第5の力の性質を絞り込むことに成功しました。
今回の研究結果は、第5の力の探索において天体の観測が適していることを提示しています。では一体どんな研究だったのかを紹介していきます。
重力の謎に関わる未知の力はあるのか?
研究の紹介の前に、第5の力と関わりの深い、重力相互作用について説明します。冒頭で上げた4つの基本的な力「基本相互作用」の中で、重力相互作用は最も身近な力ですが、現代物理学においては最も謎の多い力でもあります。原子以下のミクロの世界を記述する量子力学に重力を組み込もうとしても、性質が特異なため、うまく組み込むことができないのです。
SFの文脈では、重力相互作用を媒介する素粒子として重力子が挙げられる場合がありますが、これは素粒子の基礎的な理論である「標準模型」の中には登場せず、発見はおろか、実在するかどうかすらも現段階では不明です。
重力相互作用は他の3つの基本相互作用と比べて何十桁も弱い力であり、現状の量子力学では、重力相互作用は無いものとして扱っています。しかしこれが、ブラックホールの中心部や宇宙誕生の瞬間のような、重力が無視できないミクロスケールの現象を描き出すのに失敗する原因となっています。
そもそも、他の3つの基本相互作用と比べて、重力相互作用が極めて弱い力という点自体も大きな謎です。他の3つの間ではせいぜい6桁の差しかないことを考えれば、何十桁分も低い重力相互作用はあまりにも弱すぎます。このような差が生じる理由も、現時点ではほとんど分かっていません。
これらの謎を解決するため、さまざまな理論が提唱されていますが、こうした理論の中では、知られている4つの基本相互作用のどれにも当てはまらない、未知の相互作用が現れます。5つ目の力であるため「第5の力」という、そのままな仮称が付けられています。
第5の力の性質は、理論によってさまざまであり、「ディラトン(Dilaton)」などの独自の名前が付けられている場合もあります。ですが大半の場合、第5の力は、重力相互作用よりもさらに弱く、かつ重力相互作用とは反対向きの斥力であると仮定されています。
また、重力相互作用と電磁相互作用は無限の距離まで届き、強い相互作用と弱い相互作用は原子核以下の距離でしか届きませんが、第5の力はその中間、数mから数kmの範囲内に届く相互作用であると考えられています。
もし第5の力が存在すれば、重力相互作用を幾分か打ち消すため、「重力相互作用は距離の2乗に反比例して弱くなる」という逆2乗則(逆2乗の法則)が成立しなくなるはずです。
このため、重力相互作用を精密に測ることで第5の力を見つける試みがありますが、これは今のところ成功していません。重力相互作用の逆2乗則は、細菌の大きさ程度である1μmまでは厳密に成立していることが検証済みです。これより短い距離での重力相互作用の強さの検証は技術的に困難であり、少なくとも当面はできないでしょう。
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