ソニーはなぜ、テレビ事業を「分離」するのか――中国TCLをパートナーに選んだ“必然性”(2/2 ページ)
ソニーは中国の家電大手・TCLとの間で、テレビを軸としたホームエンタテインメント領域において戦略的提携を行うと発表した。資本比率は、TCL51%・ソニー49%とされ、今後のテレビ事業は次第にTCL主導になっていくと考えられる。ソニーはなぜこの決断をしたのか、なぜTCLをパートナーに選んだのかを考察する。
「100インチオーバー」まで多様化するテレビ市場で求められるもの
現状世界のテレビ市場は、サムスン・LGという2社の韓国勢と、ハイセンス・TCL・シャオミなど中国勢が主力だ。日本メーカーがトップランクに出ていたのはもう10年以上前の話であり、数量面を含め、今はまったく存在感がない。
理由はシンプル。大量かつ幅広いバリエーションの製品を作らねば戦えない市場だからだ。
テレビのコストは大半がディスプレイパネルで構成される。ディスプレイパネルを大量に調達した上でいかに効率よく組み立て流通させるかがビジネスの根幹に来るわけだ。
しかも現在は、テレビのサイズバリエーションがどんどん拡大している。
日本市場だけを見ると、大型テレビといえば50型くらいで、75型を超えるようなものは特別な製品……という印象があるかもしれない。だが世界的に見れば、100インチを超える超大型テレビも数千ドルで買えるような、手が届く製品に変わってきている。
ソニーのようなメーカーは、この10年、高画質・高付加価値のテレビを売ることで差別化を進めてきた。しかし、単純な画質だけでなくサイズでのバリエーションも求められるようになってくると、生産性・調達力の影響はより大きくなってくる。例えば、テレビに求められるサイズが「30インチから70インチ」の時代と、「30インチから120インチ」の時代では、それだけ製品のバリエーションは増えるし、巨大な製品を売る努力も必要になる。
100インチオーバーはあくまで付加価値商品であるし、ある種の「見せ球」に近い。だが、高付加価値製品がどんどん大型領域での勝負になってきていること、大型製品も多数作り、販売できる効率の良い体制であることは、テレビメーカーに必須の条件となってきた。中国大手の生産力・調達力は圧倒的であり、グローバルで戦うには、「差別化された製品を少数市場に売る」形では立ち行かないのだ。
垂直統合型で世界大手のTCLを選んだ必然
では、ソニーはなぜTCLをパートナーに選んだのだろうか?
これは現実的には、TCLしか選択肢がなかったと見ることができる。
韓国系2社は自分たちだけでもやっていける。中国勢の追い上げはすさまじく、今後も予断を許さぬ状況ではあるが、少なくとも、いまさら「ソニー」「BRAVIA」という看板は必要ない。彼らは十分にプレミアムブランドだ。
残る中国系大手の中だと、ハイセンスかTCLか。ハイセンスはすでにブランド認知も上がってきているので、さらに追いかけるTCLの方が有利だ。
また、TCLは傘下に、ディスプレイパネルを製造するTCL華星光電技術(CSOT)を抱えていて、垂直統合型のビジネスを強みとしている。ライバルで張るハイセンスはディスプレイパネル事業を抱えておらず、パネル以外のコンポーネント製造で差別化している状況だ。
そこで違いを打ち出すには、ブランド力・画質を含めた開発力をもつソニーを取り込み、「垂直統合の生産性を生かしたテレビ事業」を目指す必要がある……と判断されたのだろう。
ソニーのテレビ事業がもっと弱っており、ブランドだけを切り売りするしかない状況なら、パートナーも違う選択肢があっただろう。そういう意味では、今回の事業分離は「BRAVIAにまだ価値があるから」実現したことなのだ。能力もブランド価値もあるうちの事業分離なので、大きなパートナーと価値のある統合を目指すのが必然、ということになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ソニー、中国TCLと合弁会社 ホームAV事業を継承 「ブラビア」ブランドなどの製品を販売へ
ソニーは20日、20日、中国TCLとテレビやホームオーディオを手掛ける合弁会社を設立する戦略的提携に向けて検討を進めると発表した。
実は攻めていたパナソニック「VIERA」 事業売却検討まで落ち込んだ“日本特有の事情”とは
2月4日のパナソニックHD決算説明会で「パナソニック株式会社」を解散し、事業再編すると発表された。この「パナソニック解散」という字面の強さが一人歩きしてしまい、一時大騒ぎになってしまったようだ。もう一つ、経営改革の目玉として注目されたのは、これまで「聖域」として守られてきたテレビ事業にもメスを入れることに言及したところだ。
スマホだけじゃない、家電メーカーとして攻勢をかけるシャオミ 新製品に見る、日本市場の“攻め方”
中国・北京に本社を置くXiaomiが10月10日、2024年下半期に日本で投入予定の製品発表会を開催した。冒頭にかなりの時間をかけて紹介されたのが11月後半に投入されるスマートフォン「Xiaomi 14T Pro/14T」だったが、その他にもスマートバンドやテレビ、ロボット掃除機なども発表された。
新社名は「TVS REGZA」、薄型テレビの東芝映像ソリューションが商号変更 「東芝」ブランドは継続
東芝映像ソリューションは3月1日、商号を「TVS REGZA株式会社」(英語名: TVS REGZA Corporation)に変更した。商品ブランド呼称としての「東芝テレビ」「TOSHIBA」に変更はない。
裏話を語るYouTubeが話題 V字回復でトップシェアの「レグザ」に聞いた
日経新聞が1月6日、レグザの国内テレビ首位を報じた。レグザブランドは2006年発足。順調にシェアの伸ばすが、東芝の不正会計疑惑などで人気は急降下する。現在世界第2位のテレビメーカー・ハイセンスの傘下となったのが18年だ。このV字回復の軌跡を聞いた。
