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変なカメラで遊ぼう──富士フイルム「instax mini Evo Cinema」の開発者に聞く「ジダイヤル」とエフェクトの使い方分かりにくいけれど面白いモノたち(4/5 ページ)

富士フイルムの「instax mini Evo Cinema」は、とんでもなく変なカメラである。それが、3週間ほど毎日使ってみての率直な感想だ。この変なカメラの秘密について、企画担当者に根掘り葉掘り聞いてきた。

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動画+チェキで何ができるか?

 どうしても、ジダイヤルによるエフェクトに関心が向きがちだけれど、最初に嶋さんが話している通り、このカメラは「動画+チェキ」で何が出来るかが一番のポイント。その点で面白いのは、15秒という撮影時間と、その15秒の中でなら、リアルタイムでカット割りが出来るということだろう。撮影してみると分かるけれど、スナップショット的に動画を撮ろうとした時、15秒というのは意外に長い。

 「カット割りに関しては、まさに8ミリフィルムの撮り方なんです。順撮りっていうんですかね。シャッターを押してる間だけフィルムが回るから、シャッターボタンから指を離して、また撮ってみたいな。『フジカ シングル8 P1』という製品のマニュアルで、その撮り方を勧めていたんですよ。子供にプラモデルを作らせて、お父さんがシャッターを押して放して押して放して、ちょっとずつプラモができるのを撮ろうみたいな。時間経過をワンシーンで撮ってしまう撮り方もあったり、そういう8ミリフィルムらしい撮り方がヒントの一つになっています」と嶋さん。


mini Evoアプリの動画編集画面。画面下のサムネイルを見ると、途中でジダイヤルの設定が変わっているのが分かると思う。カット割りと同時にエフェクトも変更できるのが面白いのだ。ここで動画をつないで30秒までの動画にすることも可能

 15秒がワンカットで撮るには意外に長いと感じてしまうと、この一つのムービーの中でカット割りが出来る機能は、実はとても有り難いのだ。かつて、ホームビデオによる動画撮影が流行った時代に、「だらだら撮り続けないで、短いショットを重ねなさい」といったことが、ビデオ撮影マニュアル的な本にはよく書かれていたのを思い出す(というか、私もそういう文章を書いた記憶がある)。通常のムービーカメラだと、カットを割るとファイルも別のものとして保存されるから、まとめて見せたい場合、編集して繋ぐ必要がある。これが要らない上に、単にカットを割るだけでなく、ジダイヤルの設定も変えられるのだ。

 「この1台である程度完結させたいという想いがありました。その場で撮ってその場で出してほしいということを考えたときに、いわゆる編集機能の一つという位置づけも含めて、カット割り機能をカメラに入れたい、かつ、直感的操作でボタンを押すか放すかだけでいいよという風にしたのは、この製品の軸になっているところですね」と嶋さん。

 これメモリカードの中では、カットを割った分別々のファイルで保存されていて、アプリに送るとひとつなぎのムービーになっている仕様も面白い。さらに、プリントしないとムービーファイルはサーバに送られないから、共有したかったらプリントする必要があるのが、「チェキ」らしくて嬉しい。


撮影、編集、プリントまでが、カメラ本体だけで完結して、あとはアプリにデータを送るだけだから、気軽に動画で遊べる(フィルムは高いけど)。

 「昔のホーム動画とかって、みんなで集まって見るということもあって、1時間、2時間とか撮ったりするじゃないですか。でも、今回はスマホとかYouTubeとか、そういう今の動画の使われ方がベースになっているので、30秒、10秒、15秒、7秒、6秒みたいなところのコミュニケーションで使ってもらうというのを一つの軸にしています。そういう短い時間でどう表現できるかっていう部分はすごく重要視しましたね」と統括マネージャーの高井隆一郎さん。

 この製品の企画段階のプレゼンで、嶋さんが皆に見せた動画が、男女のデートのシーンをカット割りして、1日がその15秒に収まっている雰囲気の動画になっていたという。それを見てみんなでアリだなと思ったのだそうだ。

 「3パターンのサンプルを探した覚えがありますね。15秒長回し、15秒の中でご飯食べてるシーンだけの2カット、1日の数カットがまとまったもの。15秒の中でもこれだけできるんだよというのを見せたかったんです。スペックだけ見て『15秒は短いんじゃない?』って反応される方は実際いらっしゃる。でも、実際に触っていただくと時間は余りがちだったりします」と嶋さん。

 インタビュー中、嶋さんとはライブ会場での動画撮影の実際について話が盛り上がったのだけど、ああいう場所で撮る「記録」としての動画と、このカメラで撮る日常のスナップとしての動画は別物。「対面の人と過ごしてる時間を撮るとかなら、秒数は短くていいなって思います」という嶋さんの言葉は、「動画が撮れるチェキ」の本質を突いていると感じた。


今回の取材に応じていただいた、企画担当者の嶋泰寿さん。まだ若く、思い出に縛られないからこそ、冷静に調査し、撮って面白い絵になる設定が行えたのではないかと思う

 動画については、ジダイヤルによるエフェクトが音声にも掛かっている点も素晴らしいと思う。収録されている音がジダイヤルの設定で全部変わるらしいのだけど、さすがにそれを聞き比べる時間は、実機をお借りしていた20日程度では足りなかった。ただ、1960の設定で駅を撮った時の雑踏感のリアルさは、その一端のように思えた。また、シャッター音も、それぞれの時代を代表する音になっていて、実際、どれだけの資料を参考にして作ったんだろうと思うとクラクラする。

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