Qualcomm、フィジカルAI実装を1枚のボードで実現する「Arduino VENTUNO Q」
Qualcommは、傘下のArduinoが開発したエッジAIプラットフォーム「Arduino VENTUNO Q」を発表した。強力なNPUと精密制御用マイコンを統合したデュアルブレイン構成が特徴だ。クラウドを介さず、生成AIの判断から物理動作までを1枚で完結でき、現実世界で機能するフィジカルAIの実装を容易にする。
米Qualcomm Technologiesは3月9日(現地時間)、昨年10月に買収した伊Arduinoが開発したシングルボードコンピュータ「Arduino VENTUNO Q」を発表した。生成AI、ロボティクス、物理的な動作(アクチュエーション)に特化して設計された、強力なエッジAIプラットフォームという。
最大の特徴は、Qualcommの「Dragonwing IQ8」シリーズのプロセッサと、マイクロコントローラ「STM32H5」を1枚のボードに統合したデュアルブレインアーキテクチャを採用している点だ。
搭載されているIQ8は、最大40TOPSの処理能力を持つNPU、オクタコアのArm Cortex、Adreno GPUなどを統合した強力なプロセッサで、複雑なニューラルネットワーク推論やLLMなどの生成AIワークロードをエッジでリアルタイムに実行する「AIブレイン」として機能する。これに、ミリ秒単位の確実なモーター制御などを担う「アクションブレイン」であるSTM32H5を組み合わせることで、マルチデバイス構成による複雑さや遅延を排除し、認識→意思決定→アクションという一連のプロセスを単一のボードで同期、完結させることが可能だ。さらに、マルチタスクを処理する16GBの大容量RAMと拡張可能な64GBのストレージ、各種産業用I/Oを備えている。
この統合機能により、AIがサイバー空間にとどまらず現実の物理的な動作を伴うフィジカルAIの実装が容易になる。
具体的な用途としては、クラウドに依存せずローカルのLLMや音声認識を活用する完全オフラインのスマートキオスクやスマートミラーといったAIシステムをはじめ、リアルタイムの視覚処理とモーター制御を組み合わせた精密なピッキングアームや自律移動ロボットなどのロボティクスおよびモーション制御が想定されている。
また、ローカルVLM(視覚言語モデル)を利用した自動品質検査や危険行動を検知するセキュリティシステムといったエッジAIビジョン、さらにはコンピュータビジョンから生成AIまでを学習、試作するための教育や研究用途にも最適なプラットフォームとなっている。
Qualcommは発表文で「AIはついにクラウドから現実世界へと移行できるようになる」とし、機械が知覚し、決定し、行動するという一連のプロセスを1枚のボードで実現することで、あらゆる開発者やイノベーターに高度なエッジAIを身近なものにするという目標を強調した。
VENTUNO Qは、第2四半期(1月〜3月)に発売の予定。Arduino公式ストアのほか、DigiKey、Farnell、Macfos、Mouser、RSなどの公式代理店ネットワークを通じて販売される。なお、販売価格は発表されていない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AWSが「フィジカルAI」開発支援プログラム、最大9億円規模 日本企業の応募受付を開始
アマゾンウェブサービスジャパンは、日本の企業や団体向けを対象とした「フィジカルAI開発支援プログラム」の応募受付を開始した。ロボットを制御するAIモデルの開発を、AWSの利用料補助を通じてサポートする。
Qualcomm、Arduinoを買収 新ボード「UNO Q」発表、AI対応強化をアピール
米Qualcomm Technologiesは、IoTツールを開発するイタリアArduinoを買収すると発表した。買収額などは非公開。
NPUだけでOpenAIのLLM「gpt-oss」が動く! 速度や消費電力を計測してみた
NPUを搭載していてもLLMの実行についてはあまり良い話がなかったAI PCだが、AMDのNPUではOpenAIの「gpt-oss」を実行できるようになった。NPUで実行した場合の文章生成速度や消費電力などを計測してみた。
LLMの“次に来るAI”? NVIDIAが推進する「フィジカルAI」とは何か、識者に聞いた
米NVIDIAが推進する「フィジカルAI」。その仕組みや実現への課題、今、注目されている理由などを、AI開発企業Laboro.AI代表の椎橋徹夫氏に聞いた。


