”退屈な動画”を長時間見せると、人は「先延ばししていたタスク」に自ら取り組む? 北陸先端大が実験 “内職”から着想:Innovative Tech
北陸先端科学技術大学院大学に所属する研究者らが発表した論文「比較低関心度状況の生成による先延ばし行動抑制効果の検証」は、人をあえて退屈な環境に身を置かせることで、面倒な作業への着手を促す逆転の手法を提案した研究報告だ。
Innovative Tech:
2019年にスタートした本連載「Innovative Tech」は、世界中の幅広い分野から最先端の研究論文を独自視点で厳選、解説する。執筆は研究論文メディア「Seamless」(シームレス)を主宰し、日課として数多くの論文に目を通す山下氏が担当。イラストや漫画は、同メディア所属のアーティスト・おね氏が手掛けている。X:@shiropen2
北陸先端科学技術大学院大学に所属する研究者らが発表した論文「比較低関心度状況の生成による先延ばし行動抑制効果の検証」は、人をあえて退屈な環境に身を置かせることで、面倒な作業への着手を促す逆転の手法を提案した研究報告だ。
誰もが経験する“先延ばし”。人は嫌な課題や面倒な事務作業を目の前にすると、ついスマートフォンを触ったり、別のことを始めたりしてしまいがちだ。
これまで先延ばしを防ぐための対策としては、タスク自体にゲーム性を持たせて魅力的にすることや、締め切りを可視化してプレッシャーを与えることといった、対象タスクそのものに働きかけるアプローチが主流だった。
この研究では全く逆のアプローチ──対象タスクよりもさらに退屈な状況に身を置くという手法を提案している。
研究チームが着目したのは、授業中やつまらない会議中に限って、本来やるべきこととは別の作業(いわゆる内職)が妙に捗るという日常的な現象だ。面倒な作業を無理に面白くしようとするのではなく、自分の周囲を作業以上に退屈でつまらない環境にしてしまえば、ボーッとしているよりは作業でもやった方がマシと思えて自然と手がつくのではないか。研究チームはこの仮説を実験で検証した。
実験では、参加者に2桁×1桁の単純な計算問題100問を与え、1週間以内に回答して提出するよう求めた。
参加者は2つのグループに分けられる。1つ目のグループ(統制群)には計算課題だけを与える。もう1つのグループ(実験群)には、計算課題を与えた直後、全く別の実験と称して「基礎的な日本語単語(日本語能力試験N5レベル)の学習動画を90分間ただ視聴する」というタスクを追加で課した。日本語能力の高い参加者にとって、この動画は極めて退屈な内容になる。
2つの課題はそれぞれ別の研究による無関係な実験という体裁で実施した。研究者側の「退屈な動画を見せられている最中に計算課題を進める」という期待を参加者に悟られないようにするためだ。
結果、退屈な動画視聴を課されたグループは、計算課題のみのグループに比べて、課題に着手するまでの時間が有意に早まる傾向が見られた。課題の提出までの時間についても、2回実施した実験のうち第2回の結果では、動画視聴グループの方が有意に早く提出を完了していた。
アンケートの結果からも、一部の参加者が映像視聴中に自発的に計算課題を進めていたとあり、内職をしていたことが明らかになっている。
ただし、第1回の実験は年末に行われたため、早く課題を片付けて帰省・旅行に出かけたいという別の動機が働いた可能性があり、こちらでは有意な差は見られなかった。
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