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大画面ディスプレイ1台 vs. 複数枚ディスプレイ──作業効率がいいのはどっち? 2009年発表の論文を紹介ちょっと昔のInnovative Tech

富士ゼロックスの研究技術開発本部に所属していた柴田博仁さん(現在:群馬大学教授)が2009年に発表した論文「大画面ディスプレイ・多画面ディスプレイの導入による業務効率化の測定」は、大画面や複数ディスプレイの導入効果を定量的に評価した研究報告だ。

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ちょっと昔のInnovative Tech:

このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。

X: @shiropen2

 富士ゼロックスの研究技術開発本部に所属していた柴田博仁さん(現在:群馬大学教授)が2009年に発表した論文「大画面ディスプレイ・多画面ディスプレイの導入による業務効率化の測定」は、大画面や複数ディスプレイの導入効果を定量的に評価した研究報告である。


大画面ディスプレイ1台 vs. 複数枚ディスプレイ 作業効率がいいのはどっち?

 被験者8人(企業で知的財産管理業務に携わる人たち)に17インチのディスプレイ1台(これをSmall条件とする)、24インチのディスプレイ1台(同Large条件)、17インチのディスプレイ2台並置(同Dual条件)の3つの環境を使ってもらい、実験を行った。

 ディスプレイ環境変更の前後約2週間ずつ、被験者のPC操作ログを収集した。操作ログには、マウスやキーボードによるウィンドウ操作(ウィンドウのアクティブ化、移動、サイズ変更)が含まれ、これらが要する総時間を算出した。

 その結果、Small条件では作業時間の8.5%をウィンドウ操作に費やしており、現行のウィンドウシステムの改善が必要だと示唆した。Large条件ではウィンドウ操作コストの削減は見られなかったが、Dual条件では13.5%の削減を確認した。よって、ウィンドウ操作コストの観点からは、大画面単一より複数ディスプレイの方が優れているといえる。


アクション時間1時間当たりのウィンドウ操作回数

 Dual条件ではSmall条件と比較して、ディスプレイ間のウィンドウアクティブ化が17.5%、ディスプレイ内のウィンドウ移動が66.4%減少した。これは複数ディスプレイの使用により、ウィンドウの切り替えや移動の必要性が減ったためだと考えられる。

 一方、ウィンドウのサイズ変更はDual条件でSmall条件の2倍に増加した。これは複数ディスプレイにより、ウィンドウサイズの適切な調整が容易になったことを示唆している。被験者への主観評価アンケートでも、作業の効率性と快適性において、Large条件よりDual条件の方が高い評価を得た。


ウィンドウの操作の変化に対する主観評価

 複数のウィンドウを並べて作業することが多い人にとっては、大きな1台のディスプレイを導入するよりも、小さな複数のディスプレイを導入するほうが、効率的な作業環境を低価格で構築できるかもしれない。

Source and Image Credits: 柴田 博仁. 大画面ディスプレイ・多画面ディスプレイの導入による業務効率化の測定. 情報処理学会論文誌. 50, 3, 1204 ‐ 1213, 2009-03-15



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